2013年10月27日日曜日

風邪の漢方薬のまとめ

今回は風邪向けの漢方薬として販売されているOTC漢方薬の正しい使い分けを知っていただくために簡潔にまとめてみます。
まず漢方薬を使う上での大原則であり漢方診断の入り口でもある八綱弁証について知っておいてください。一般の方でも十分に理解していただける単純な理論です。
一言で言ってしまえば体質・病気の性質の分類です。
冷えているために患った、あるいは冷えたことが原因の病気(寒証)と過剰な熱生産、冷えとは逆に熱が原因で起きている病気(熱証)。それと、不要なもの(邪)がついて起きている病気(実証)と何かが不足しているために罹ってしまった病気(虚証)が基本的なわけかたです。
これを風邪薬に当てはめて。寒実証用・寒虚証用、熱実証用・熱虚証用の処方に分けて説明してみます。

・寒実症用の風邪漢方

これは寒さ(寒邪)にあたって罹った風邪で、ほとんどは引き始めの状態です。
 その特徴として
 ・寒気・鼻が出る場合は水っぽい・関節の痛みなど
 代表的な処方
 ・葛根湯:強い寒気と首から背中のこわばり、食欲があることが必須条件です。
      発熱・身体の痛み頭痛を治します。
 ・麻黄湯:寒気が強く、食欲があることが必須条件です。
      咳・節々の痛み・発熱に効きます。     
 ・小青竜湯:寒気あるいは寒さを強く感じ、食欲が落ちていないこと、
       薄い水っぽい鼻水・痰であることが必須条件です。
      鼻水・咳・喘息発作を鎮めます。

・寒虚証用の風邪漢方

もともと冷えがちの体質の人あるいは体が衰弱気味の時に寒さにあたって罹った風邪です。
 寒実証の風邪を初期の間に治せなかった場合にもなります。
代表的な処方
 ・桂枝湯:寒気があり体がだるく動きたくない、食欲は極端に落ちていない事が必須条件です。
      発熱、怠さに効果があり、高齢者や病弱な人のひき始めの風邪に向いています。
 ・参蘇飲:胃腸が弱く、もともと虚弱な体質で、どちらかと言うと寒気がする。
      症状が強いわけではないが咳や悪寒などが続いている場合に効きます。
 ・香蘇散:寒気、食欲減退が必須条件です。
      発熱・悪心嘔吐・胃腸炎に効きます。
 ・麻黄附子細辛湯:節々の痛み・寒気・下半身の冷えが必須条件。
      寒気のわりに発熱は軽い高齢者の風邪に向いています。
      咳・喉の痛みにも効果があります。
 ・半夏厚朴湯:寒がりであることが必須条件です。
        咳・喉の違和感・声嗄れなどに効果があります。
     

・熱実証用の風邪漢方

主に真冬以外の季節に細菌感染・ウイルス感染による咽頭炎・喉頭炎などによく見られます。
 代表的な処方
  ・麻杏甘石湯:寒気は全くなく暑がり、食欲は旺盛であることが必須条件です。
         熱実証用の風邪薬の基本形です。主に発熱・咳に効きます。
  ・五虎湯:麻杏甘石湯に桑白皮を加え咳に対する効果を強めています。
       食欲低下の人、寒気のする人は絶対に飲まないでください。
  ・銀翹散:寒気はなく熱感強いことが必須条件です。
       喉の痛み・頭痛・発熱に効果があります。

・熱虚症用の風邪漢方

胃腸に風邪が入ってしまった場合、風邪の初期治療を誤った場合がほとんどです。
 代表的な処方
  ・小柴胡湯:熱感があり食欲も低下気味で微熱が続いている事が必須条件です。
        発熱・頭痛・悪心・食欲不振など
  ・柴胡桂枝湯:小柴胡湯に頭痛・腹痛・胃痛など痛みの症状が加わっている時に使います。
  ・麦門冬湯:寒気が待ったことが条件です。
        痰の出ない空咳・喉の乾燥に効果があります。
  ・辛夷清肺湯:寒気がない事が条件です。
        粘りの強い鼻・鼻づまりに効果が有ります。
  ・竹茹温胆湯:寒気はなく風邪が長引き熱がこもってしまったような場合に使います。
         いわゆるこじれた風邪・長引く咳や微熱・怠さといった症状に使います。

2013年10月20日日曜日

しもやけの漢方薬:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

今回は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)です。
舌を噛みそうな長い名前です。いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。
“体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛”とあります。体力中等度は無視してください。表現としても適切ではないですね、中ぐらいの体力で何か問題があるのでしょう?また体力はないと飲めないような危険な薬なのでしょうか・・・
体力云々が治療と対象となるのは体力が著しく低下している場合だけだと思います。また、広い意味で体力を体の状態として理解するなら、この処方の場合は体力が低下している時に必要な薬です。特に血の量的あるいは質的な低下がこの当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いる前提となります
手足の冷えそのものがこのお薬の治療対象になります。それも寒い季節の手足の冷えです。まれに手が冷たいと人に言われたから私は冷え性ですという人がいますが、あくまで自分でどう感じているかです。自分で手が冷える足が寒いと感じているかということで他人が触れてどうこうは関係ありません。漢方薬を飲む際は必ず自分自身の感覚を再重要視してください。



整理しますと、当帰四逆加呉茱萸生姜湯はもともと血が少ないあるいは血の働きが悪い血虚の人が強い寒冷にあたり手足の血流が極端に減少し痛みなどを生じた時に使うお薬です。一番良く使われるのは‘しもやけ’の時です。
冷え、冷え性は気の働き、陽気の減弱から起こります。通常の冷え性は補気補陽が治療の中心になります。単に冷え性である場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯ではなく、他のお薬を使います。
しもやけが出来やすい方は、本格的に寒くなる前に当帰四逆加呉茱萸生姜湯を飲み始めると、しもやけが出来ずにすみますので試してみてください。

※当帰四逆加呉茱萸生姜湯は寒虚証用の方剤です

2013年10月15日火曜日

暑い風邪に銀翹散

今回は風邪の薬“銀翹散(ぎんぎょうさん)”です。
最近は銀翹散もOTC薬として店頭にも並び、風邪の時に勧められることがあるようです。ただ必ずしも適した症状で使われていないケースが有るようです。
いつものように効能効果を見てみると‘かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛とあります。単純明快でほぼ間違いはありません。210処方外の承認だけあります。
この症状すべてが当てはまっていれば8割型は銀翹散が適しているはずです。風邪で、のどが痛くて、のどが渇いて、せき、頭痛もある。この中で最も大事な症状は喉の渇きです。この症状の中で喉の渇きだけが風邪の症状ではありません。銀翹散を飲むと良いよと言っている症状です。


治病求本でも触れていますが風邪には寒い風邪と暑い風邪があります。寒気がしてガタガタ震えるような風邪は主に冬にかかる寒い風邪です。対して暑い風邪は、温病(うんびょう)と言い、寒気はなく体のほてり・熱感が強く・喉や口が乾くといった熱証の風邪で真冬は少なく、春先に多い風邪です。この処方の構成生薬のほとんどは体を冷やす働きをします。寒い風邪は体を温める漢方薬で治します。暑い風邪は体を冷やす漢方薬で治ります。道理かと思います。喉の渇きが暑い風邪の目印になります。できれば体のほてり・熱感といった言葉も効能効果に入れておいてくれればよかったのですが...
まとめると銀翹散は、寒気はなく体のほてり・熱感があり、のどが渇き、のどの痛み・せき・頭痛などの症状がある風邪に効きます。


2013年10月6日日曜日

風邪薬としての柴胡桂枝湯

今回は柴胡桂枝湯です。
風邪から胃腸炎・胃潰瘍・胆石や神経痛などいろいろな疾患に使うことが出来ますが、今回は風邪に関しての解説です。
ここではあくまでOTC薬(一般販売医薬品)を正しく使っていただくことを目的に書いていますので、いつもの様にOTCの効能効果を見てみます。
“体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・はきけなどのあるものの次の諸症:胃腸炎、かぜの中期から後期の症状”とあります。
体力中等度ってなんでしょうね?客観的に体力を知ろうとしたら体力検査しないといけませんね。漢方薬で体力云々、特に体力がありとか体力中等度は無視してください。元気だということですから病気じゃありません。
体力には通常の状態と低下している時しかありません。柴胡桂枝湯の場合は体力が低下している状態が正解です。
それからダメ出しついでに“風邪の後期の症状”って何でしょ?
後期ってことはもう治るっていうことかと思うんですが、それなら薬はいらないでしょ!
おそらくこうした表現というのは殆ど治療経験のない者が古典の文書を解釈して作ったものと思われます。もともと漢方の古典というのは限られた場面での短い記述しかしていませんので、それをもとに正しく理解してもらえる表現は不可能です。
それにいきなり胃腸症状から始まる風邪もありますので、風邪の初期から柴胡桂枝湯が向いている場合も多いです。



つぎに“多くは腹痛を伴い”とありますが、胃痛を含めて腹痛がなくて“微熱・寒気・頭痛・はきけ”であれば小柴胡湯を使います。そのほうが構成生薬が少ないので早く良く効きます。よく柴胡桂枝湯は小柴胡湯と同じく風邪に使う桂枝湯を足したものだという説明をしているところがありますが、そうではありません。柴胡桂枝湯は小柴胡湯に桂皮と芍薬を加えた方剤です。つまり小柴胡湯の対象で痛み症状がある場合に使います。
もう一点は“微熱・寒気”とあります。発熱・悪寒がもともとの古典の表現です。悪寒は寒気と全く同じ意味です。発熱は体温計で測って熱があるということを指しているのではなく、漢方で発熱という場合は寒気の逆で、熱感、体のほてり・暑いと感じることです。
つまり発熱悪寒は暑かったり寒かったりするという意味です。
まとめてみますと柴胡桂枝湯の効能は“やや体力が消耗気味で疲れを感じだるく、体が熱くなったり寒くなったりし、頭痛や吐き気・胃痛または腹痛がある風邪・胃腸炎”ということになります。

2013年10月1日火曜日

漢方薬の風邪薬:麻黄附子細辛湯

今回は風邪の漢方薬麻黄附子細辛湯です。
早速、効果効能ですが“悪寒、微熱、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛、冷感あるもの。感冒、気管支炎、咳嗽”とあります。
悪寒、微熱、四肢に疼痛、冷感。ここが大事です!
このお薬は冷えによって引いた風邪、つまり寒い風邪、冬に多い風邪、寒証の風邪です。
悪寒・寒気が強いのが寒い風邪の特徴です。そして手足、節々の痛みもあります。
強い寒気と四肢の痛み、これだけだと葛根湯とどう違うの?
もっとも違うのが微熱。
葛根湯は急激に上がっていく熱、あるいはすでに高くなってしまった発熱に使います。言い換えると高熱が出せるほど元気な人に使うのが葛根湯なのです。
一方、麻黄附子細辛湯は、もともと体の深部が冷えている人が、更に寒い風邪を引いてしまった場合です。
悪寒はひどいけど高熱にはならない。ここが使い分けのポイントです。
もともと何処が冷えているかというと、腎ですね。腎陽虚、平たく言えば老人に多い状態です。めまいも腎虚の特徴です。低血圧は意味不明です。



まとめると、普段から冷えているお年寄り、またはお年寄りのよう冷えてる人が寒さにあたって風邪を引き、ひどい寒気のわりには熱はそれほど上がらず、手足が冷え痛んで、咳も出たりする。そんなときに麻黄附子細辛湯を飲むと良くなります。
それから麻黄附子細辛湯は喉の痛みにも効果があります。ただ、この場合は必ずお湯に溶かしてゆっくり飲んでください。細辛の麻酔作用が喉の痛みを止めてくれます。