2013年9月25日水曜日

女神散:喜谷實母散

今回は女神散(にょしんさん)です。医療用では時々使われますがOTCでは女神散の名前での販売はされていないかと思います。
ですが、喜谷實母散(きたにじつぼさん)の名で古くから振り出し、煎じ薬として販売されています。
効能効果は“更年期障害、血の道症、月経不順、冷え症およびそれらに随伴する次の諸症状: 月経痛、腰痛、頭痛、のぼせ、肩こり、めまい、動悸、息切れ、手足のしびれ、こしけ、血色不良、便秘、むくみ”となっています。
だいたいこの通りに思ってもらって良いんですが、冷え性は前提にはならないですね。
あくまで肝虚から来るのぼせ、熱症状の相反として感じる足の冷えがある程度です。



この薬の効果はイライラ・のぼせ体質の方の不定愁訴の解消です。
漢方的に言えば。肝気鬱結か肝陽上亢といった状態ですが、
精神ストレス、女性特有のストレスでイライラ・のぼせ体質に陥った人の生理痛やら頭痛・めまい・動悸などに効果があります。

このお薬は飲み方が特殊なので、用法をよく読んでください。
振り出しだけで飲んでる方も見受けますが、効果も薄いですから、
必ず煎じて(煮出して)飲んでください。
1回目から煎じて飲んでも良いです。
その場合は、1回めの煎じ液を夜飲んで、
煎じかすを翌朝もう一度煎じて飲めばよいです。

2013年9月16日月曜日

猪苓湯:膀胱炎の漢方薬

今回は猪苓湯(ちょれいとう)です。
いつものように効能を見てみると“体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇くものの次の諸症:排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみ”とあります。
それほど使い方が難しいお薬ではないのでこれで良いのかもしれませんが、“体力に関わらず使用でき”この前置きは意味ないでしょ!あえて言うなら極端に体力が落ちている人には使えません。
猪苓湯は(チョレイ・ブクリョウ・タクシャ・アキョウ・カッセキ)の5種類の生薬で出来ています。このうちアキョウ以外は全て水を出す、尿を出す働きをします。アキョウには止血の効果があります。
つまり簡単に言ってしまえば、尿が出づらくなっている時、あるいは尿を出さなければならないときで、血尿を伴っていても大丈夫と言うことです。
まさに膀胱炎の症状です。尿が出づらかったり、すぐにトイレに行きたくなったり、血尿もあったりと言った症状です。
膀胱炎かなと思ったら、極端な体力低下がない、強い冷えを感じていない限りは試してみて下さい。
一点だけ注意は、カッセキを配合していますので長期連用はしません。予防にと思って続けてしまうと腎臓を傷めることがあります。急性膀胱炎に1週間程度をめどに使うお薬だと思って下さい。

2013年9月8日日曜日

耳鳴丸=名前のとおりです!

今回は耳鳴丸(じめいがん)です。
名前の通り耳鳴りのお薬です。
効能も“貧血性の耳鳴、腰痛、四肢及び腰の脱力感”と簡潔な書き方ですが、
漢方・中医学の臓腑弁証で言う肝腎陰虚という状態で用いるお薬です。
肝腎陰虚とは、五臓のうち肝と呼ばれるところと腎と呼ばれるところが衰弱している状態のことで、原因としては加齢やストレスということになるでしょう。
肝腎陰虚になると、口や喉の渇き・身体の熱感・ほてり・のぼせなどを感じるようになり、さらに足腰のだるさや無力感・手足のほてり・ふらつきなども感じるようになります。

耳鳴丸はこうした状態の人に起きた耳鳴りに効果があります。
OTCの効能書きそのままだと貧血の人の耳鳴り、腰痛、足腰の脱力のための薬になってしまいます。
貧血は必須の条件ではないですし、腰痛・四肢及び腰の脱力感を治すのであれば他の薬のほうが良いでしょうね。
“腰痛・四肢及び腰の脱力感があり口や喉の渇き・身体の熱感・ほてり・のぼせなどを伴うの耳鳴り”というのが正しい効能でしょう。
ちなみに販売しているのは松浦漢方株式会社だけのようです。


2013年9月3日火曜日

ドキドキに柴胡加竜骨牡蛎湯

今回は柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。
メンタル系の症状によく使われる処方ですが、もともとは風邪や伝染性の発熱性疾患の治療を誤り長引かせ自律神経に異常をきたしたような症状に使われていました。
現在では不眠は情緒不安などに用いることがほとんどです。
いつものように効能を見てみると“体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘”
体力中等度ですか・・・例によって意味不明どころか虚証用の方剤ですから体力低下あるいは消耗状態に使います。
効能にある病名、症状は大体これで良いんですが、便秘を目的に使うことはないでしょう。高血圧である必要もないです。
“精神不安・動悸・不眠・神経症・更年期障害・小児夜泣き”ってところで良いでしょう。


体質的な前提を加えると、
熱虚証用の方剤ですので、「喉の渇き、ほてり、のぼせなどを感じることがあり、暑がりで食欲はあり、どちらかと言うと便秘がちでイライラしやすく気が散りやすい人の不安・不眠・動悸・神経症・更年期障害・自律神経失調症」ということになります。
竜骨と牡蛎は、重鎮安神薬と言われ、気持ちを落ち着かせる働きがあります。
落ち着かせると言ってもお酒や精神安定剤のように意識レベルを落とすということではありません。
ちょうど散らかっている部屋を片付けるようなもので、あちこちにあるものを一箇所にまとめる。あるべきところに戻すという感じです。
あれやこれや余計なことに気が散ったり、つぎつぎ色んな事が頭に浮かんで落ち着かないといった状態のときに、気持ちを一つにまとめてくれる働きです
いろいろ考えてしまって眠れない等という時もこれに当たるでしょう。
飲んではいけないのは、寒証の人です。
冷えを感じたり寒がりの人は飲まないでください。具合悪くなります。
それから何年間も続けて飲む処方ではありません。
数週間か数ヶ月で改善されるはずです。それで効かなければ他の処方を考えましょう。
また、あっているからと言って漫然と続けないようにしてください。