2013年6月25日火曜日

半夏厚朴湯:もともとは咳の薬だけどね

今回は半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。

いつものようにOTC薬の効果・効能をみてみると、
“体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感”とあります。
例によって体力検査は必要ありません。と言うよりこの処方の場合は、余り気にしないで良いです。
虚証向けではありますが、短期間であれば実証の人が飲んでも大丈夫ですし、効果もあるはずです。


この薬の効果を一言で言えば、“詰まっているものを下へ降ろす”ことです。
詰まっているのは“気”の流れであり、気の滞りで生じた痰湿の逆行です。
気の流れがスムーズであることで、精神も安定します。
半夏厚朴湯は、喉から胸のあたりの気の流れをスムーズにしてくれます。
不安感やうつ的な症状をスッキリさせてくれます。
また実際には何もないのに、喉に詰まった感じ、異物感がいつまでもあるといった症状(梅核気)も神経性の症状であり、半夏厚朴湯で気の流れを正すことで治ります。効果も早いです。
気管支炎や喘息の薬としても効果があります。
軽い咳や痰が続く場合に向いています。


基本的には効能・効果に書かれている通りの使い方で良いのですが、
一点だけ重要な問題があります。
吐き気や嘔吐にも効果はあります。
ですが、つわりには使いません。
厳密に言うと妊婦及び妊娠の可能性のある人には使えません。
この処方は下へ降ろす効果を持つ薬です。
主に含まれている厚朴の影響ですが、強くはありませんが堕胎作用、または妊娠しづらくする作用があります。
このことは医療用も含めて添付文書に記載されていません。
女性の方が服用する場合は注意してください。

2013年6月18日火曜日

とりあえず偏頭痛には呉茱萸湯

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)です。
OTC薬の効能は
“みぞおちが膨満して手足が冷えるものの次の諸症:頭痛、頭痛に伴うはきけ、しゃっくり”
とあり、かなりあっさりしています。間違いはありません。
ただ、どこが冷えているかが重要です。
手足の冷えって・・・
確かに手足も冷えるでしょうけど、
呉茱萸湯の一番の目標になるのは“胃の冷え”です。
胃寒です。
呉茱萸湯は胃寒を治す薬です。
胃が冷えると何が起きるか、
まず、人間どこの部位も冷えていると動かない。
胃が冷えていれば、食欲が無くなる、胃が動かないから食べたものが消化されないので胃が痞える、張る、そして吐き気がする。*冷えているので食べてすぐ吐くことはない
こうした症状が起きます。
同じ人参湯からの派生方剤でも六君子湯なんかよりも、もう一段胃が冷えています。




胃の冷えを人為的に起こすことができます。 
かき氷や、アイスなど冷たいものを一気に食べると、キーンと頭が痛くなります。
呉茱萸湯が効く頭痛はこれが、慢性的、体質的に起きたものです。

偏頭痛は頭部の血管が拡がることによっておきます。
胃が冷えると脳を守ろうとして頭部へ向かう血流量を増やそうとする反射が人体にはあるのかもしれません。
経験的にも、呉茱萸湯が効く頭痛は緊張型ではなく偏頭痛ですね。
普通の鎮痛剤が効かない、偏頭痛と思われる頭痛を起こす方は、
呉茱萸湯を試してみると良いでしょう。
比較的効きは早いかな・・・
それから。。。味は最悪ですw


秀峰堂中医学研究所

2013年6月2日日曜日

あれこれ思って落ち着かないなら桂枝加竜骨牡蛎湯

今回は桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)です。
いつものように効能書きをみてみると、“体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症”
また体力中等度などという客観的には捉えようのない表現が使われています。早く改善してほしいものです。
虚証用の方剤でもあり、虚弱な人にしかむかない処方です。元気で活動的な人が眠れないとしても効きません。
処方名からも判るように桂枝湯(正確には桂枝加芍薬湯)に竜骨と牡蛎を加えた方剤です。
残念ながら竜は実在しませんので、竜骨は竜の骨ではなく牛や鹿などの哺乳動物の骨の化石です。牡蛎は、そのまま牡蠣(かき)の貝殻です。
カルシウムの鎮静作用は広く知られていますが、竜骨と牡蛎は重鎮安神薬と呼ばれ、精神を鎮め安んじる働きを持ちます。
しかし、精神安定剤のようにボンヤリさせ眠くさせるのとは違います。
イメージとしては、あちこちに散らばっているものを一箇所にまとめる働き、
あれこれと思い、いろいろなことを考えてしまい集中できないでいる状態を、その時にあるべき状態に精神をまとめてくれる働きをします。
眠れないという状態は、あれこれと頭に浮かび眠ることに集中できない状態です。
あれこれ気が散って落ち着かない状態もそうです。

まとめてみますと、桂枝加竜骨牡蛎湯は虚弱で疲れやすい寒がりな人の、あれこれ考えて落ち着かず、ちょっとイライラしたりビクビクしてしまう時や、いろんなことが頭に浮かび眠ることができないといった症状を改善してくれます。


秀峰堂中医学研究所