2012年11月26日月曜日

加味帰脾湯

 ドラックストアで買える漢方薬第2回目は、加味帰脾湯(かみきひとう)です。
なぜ加味帰脾湯かというと、この処方もかなり誤解されて使われようとしているからですね。
R製薬の和〇箋っていうのが、良くお店に並んでいます。
このパッケージに
 “ストレスで蓄積した精神疲労などによる
      憂鬱や不安感などを改善する
って書いてあるんです。
漢方薬のパッケージとか添付文書の効能効果に書いてある文言というのは大体おかしいんですが(何故おかしいかは別の機会に)、これはかなりマズイというか、マチガ〇っていうか、デタ〇メっていうのか、とにかくびっくりです!
憂鬱や不安感には効くんですよ、不眠にも効きます。
ただ、原因はストレスや精神疲労じゃありません。
この薬は一言で言えば
    貧血の薬です


もう少し詳しく言うと、脾の働きが悪いために血液を体内に保つことが出来ずに、体が弱り心も弱ってしまっているのを治す薬です。
脾の働き、つまり胃腸機能。栄養機能ですね。
脾の統血作用と言って、血は脾の働きによってコントロールされていると言う考えですが、それはこの際置いといて、
平たく言えば、胃腸はもともと弱い、何らかの出血(生理でも痔でも、消化性潰瘍でも)が続いたせいかもしれないが、著しく栄養状態が悪く体力的にも衰弱したために精神症状(イライラ、不安、不眠、うつ症状など)まで引き起こしてしまった状態を治す薬です。

まとめると、以下の状態がすべて当てはまる人の精神症状(不眠・不安・抑鬱・いらいら)や体力低下の改善に加味帰脾湯はよく効きます

・貧血あるいは長く続く出血
・食欲がないか、あっても一度にたくさんは食べられない
・非常に疲れやすい
・顔色がわるい
・元気はない(あったとしてもカラ元気)
・イライラしやすかったり、ドキドキしやすかったりする
・のぼせ、手や足が火照る(これがなければ帰脾湯)



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2012年11月13日火曜日

第一回 葛根湯


このブログでは、誰でも手軽に購入して漢方薬を安全に有効に服用できるように解説しています。
今回は日本で一番よく使われる漢方薬である葛根湯です。

漢方薬に副作用は・・・

いきなり副作用の話ですが、そもそも漢方薬に副作用はあるのか?
漢方薬は自然のもので出来ていて長く飲むのだから副作用はないという人、漢方薬とは言え薬なんだから当然副作用はあるという人、いろんな事を言われますが、
答えは、漢方薬に副作用はありません。
厳密に言うと、正しく使われていれば副作用はないということで、もし好ましくない作用、健康を損ねるような事が起きれば、それは使い方を誤った。飲んではいけない薬を飲んではいけないときに飲んでしまったと言うこと。つまり間違ったと言うことです。

西洋薬と漢方薬

西洋薬は正しく使っても好ましくない作用が出ることがしばしばあります。西洋薬に副作用はつきものと言ってもよいです。
これは単純な確率論によって西洋薬は用いられるからです。風邪をひいている人100人に飲んで貰ったら70人の人の症状が楽になった。だからこの薬は風邪に効く。これが西洋薬の考えです。
いっぽう漢方薬は、人間がかかる病気をもっとダイナミックに捉えています。
体と病気との関わり合い、生体防御力と病邪の戦いの進行状況に応じて薬の使い方を考えます。
風邪で言うならば、鼻から入ったウイルスが鼻の粘膜を痛める。そのせいで鼻水やくしゃみが出る。少し進んで喉までウイルスが来て、喉が痛くなり熱も出始める。もっと進んでウイルスが気道粘膜を破壊して咳が出る。そのままにしていれば肺炎を起こすかもしれないし、食事がとれずに栄養状態が悪化して死ぬかもしれない。
病邪は体の表面に近いところから徐々に深いところに進み生体を痛めつけます。
もちろん人間の体には免疫力など、防御機能があります。そのおかげで軽い風邪なら何もせずに治ることもあります。
風邪に使う漢方薬はこの生体防御機能を利用して風邪を治しています。
ですから、病邪が今どこまで進入しているかによって、そして病人の防御力がどの程度か、それに応じて飲むべき薬が異なっています。

さて、葛根湯は・・・

結論から言えば葛根湯は風邪のウイルスが生体に侵入したばかりで、体自体は全く健康で生体防御力が満タンの状態です。
裏を返せば、風邪をひいて数日たつ、あるいは胃腸も弱く、体も疲れ弱っていて明らかに免疫低下状態の人は葛根湯は飲んではいけません。そんな西洋薬と同じ使い方をすれば副作用が出て、胃が重く、食欲がなくなりいっそう体力を落とし、風邪が治らなくなってしまいます。
葛根湯には何が入っている
甘草、桂皮、麻黄、生姜、大棗、芍薬、葛根
葛根湯はこの七つの薬草から出来ています。
甘草は急性疾患、病気が急激に進んでいくのを緩和するはたらきがあります。
桂皮と麻黄は一番外側の防御機能を強く刺激し、病邪を追い出します。具体的に言えば大量に発汗させようとします。ここが大変重要ですが、風邪をひいて熱が上がり強い寒さ、激しい悪寒を感じているときに、体表を温め汗をかかせ熱を下げてくれます。
攻撃的な方法ですので、体の弱っている人には使えません。
生姜、大棗は、桂皮・麻黄の強い防衛力で、かえって体を弱らせてしまわないようバランスを取ろうとしてくれます。
芍薬と葛根は体の痛みを和らげてくれます。芍薬は筋肉の痛み、葛根は特に項背部の痛みを緩和してくれます。

まとめると、

葛根湯は急激に寒気、悪寒からはじまる発熱があり項背部と体のこわばり痛みがおきている状態に飲むと、体が温まり汗をかき、痛みが治まり熱が下がる作用があると言うことです。
インフルエンザもこうした症状ではじまることが多いですね。
また、こうした状態に当てはまらないときに飲めば、全然効かないか、かえって悪化させることもあります。
葛根湯を飲むのは、ひきはじめ、寒気、体の痛み、項背部のこりがある発熱性の症状のときです。
それから、葛根湯を飲んだら必ず暖かくして休んでください。汗を出さないと病邪は出て行きません。