2013年3月31日日曜日

茵陳蒿湯

今回は茵陳蒿湯(いんちんこうとう)です。
清熱剤だけで出来た単純な処方ですので、
いろいろ応用的に使う事も出来るのですが、
一般の方がご自身の判断で飲む場合(いわゆるセルフメディケーション)で考えると、
蕁麻疹の薬と言うべきでしょう。
OTCの茵陳蒿湯エキス剤の効能には
“口渇があり、尿量少なく、便秘するものの次の諸症:じんましん、口内炎”とあります。
だいたい良いんですが、実熱(冷やすべき熱)を取るための漢方薬ですから、
口渇とともに、食欲があり暑がりでもあり、尿量が少ないよりも尿が濃い色になります。
必ず便秘でなくてはなりません。下痢、下痢がちの人は飲んではいけません。
簡単にまとめてしまうと、暑がりの人の蕁麻疹を治す薬と言うことになります。
急性・慢性問わず蕁麻疹に使えますが、長期の服用は注意して下さい。


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2013年3月24日日曜日

温清飲:治りにくい湿疹に

このブログは漢方エキス剤の正しい使い方を紹介しています。
今回は温清飲(うんせいいん)です。

またいつものように商品パッケージ、注意書きの効能から見てみましょう。
“体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎”
また例によって体力中等度?
体力測定している場合じゃないです。

この温清飲は大きく分けると、血を作る成分と熱を取る成分の二つで出来ています。
皮膚がカサカサ・色つやが悪い、これは漢方で言う“血虚”、つまり血が量的に質的に少ない事による症状です。のぼせる。余分な熱、不要な熱がある状態です。
この余分な熱には、積極的に冷やして良い場合とそうでない場合があります。
積極的に冷やしてはいけない熱は、身体の消耗がひどく心身のバランスが崩れているような場合です。
温清飲は積極的に冷やす薬ですので、あまり身体が弱っている人は飲めません
熱というのは言い換えれば炎症と捉えられます。

まとめてしまうと、温清飲は血液に不足、貧血が根本にあって、炎症性の症状が身体の表面あるいは上部に表れている症状を改善、治療してくれます。
効能に“月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎”とありますが、月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症は温清飲がファーストチョイスになることは一般的にはあり得ません。

湿疹・皮膚炎の薬だと思って下さい。
皮膚の色悪い、あるいはカサカサとひび割れて血がにじむような、慢性、または慢性化しつつあるような湿疹の薬です。
アトピーのような場合にも向いている状態があります。

※飲んでいけないのは、寒がりの人、トイレが近い人、食欲がない人。このタイプの人は体調が悪くなるので飲まないで下さい。



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2013年3月12日火曜日

胃苓湯:吐き気のひどい胃腸炎、下痢の漢方薬

いつものようにパッケージの効能を見てみると
効能体力中等度で、水様性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴うものの次の諸症:食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛

例によって体力中等度は意味不明
それ以外は効能どおり下痢のお薬です。
平胃散と五苓散の合方などと表現されていることが多いが、五苓散が基本骨格です。
五苓散厚朴、陳皮、甘草を加えたと説明すべきです。
つまり水分の取りすぎ、水分代謝が悪いことが原因で下痢、嘔吐の症状が出ている時に使います。
厚朴、陳皮が加わることで吐き気や嘔吐を抑える効果が増強されています。

まとめると、食べたり飲んだりすると、すぐに嘔吐あるいは吐き気が強まり水のような下痢を繰り返している状態で、口渇、尿量減少、むくみなどを伴っている状態に効きます。

ちょうど二日酔いやウイルス性の胃腸炎なんかもこんな状態でしょう。


2013年3月3日日曜日

胃の痛みにはまず安中散


漢方薬の胃腸薬としては一番有名かもしれません。
実際よく効くし、使いやすい処方だと思います。
ただ、誤った使い方を啓蒙しているメーカーが1社ありますけどね。

まずパッケージ、使用上の注意に書かれている効能には、
“体力中等度以下で、胃痛または腹痛があって、ときに胸やけ、げっぷ、食欲不振、はきけなどを伴う方の神経性胃炎、慢性胃炎に効果があります。”
半分ぐらい正しいです。
体力中等度?相変わらず意味不明です。
薬を飲む前に体力検査が必要なんでしょうか…

胃痛または腹痛、その通りです。安中散は胃痛のための薬です。
胃が冷えることによって起きた胃の痛みを治します。
散寒止痛という表現をします。
胃が冷えているのですから当然のこととして食欲はありません
食欲が亢進して胃が痛い場合は胃熱がありますので、安中散では逆効果です。安中散が適しているかどうか判断するポイントです。
胸やけ、ゲップ、はきけは食後ではなく、空腹になる頃に軽く感じるような程度のものに向いています。
神経性胃炎、慢性胃炎…神経性であるか、そうでないかは関係ないですね。あくまで胃が冷えているかどうかです。慢性胃炎といえる場合もあるとは思いますが、基本的には急性胃炎向きです。

まとめると、
食欲がなく強い胃痛があり、吐き気や胸やけがある場合は食後数時間してから起きる急性胃炎、慢性胃炎に効果があります。

P.S.飲む前に飲んでも効きません。