2014年3月30日日曜日

元気な人には効きません“十全大補湯”

今回は十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)です。
いつものようにOTC漢方薬の効能を見てみましょう。“体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血”とあります。
例によって体力云々から始まっていますが、体力を回復させる薬ですから、体力が有り余っている人が飲むことはないですし、十分に体力が有り元気な人が飲み続けたら、かえって高血圧や肥満、糖尿病といった病気に向かってしまします。あくまで足りないものを補うのがこの十全大補湯の役割です。
この場合の足りないものは、気力であり血であり、人間が生きている上で必要なもの全てです。じっくりと体を作ってくれるお薬と言えます。一般の人が持つ漢方薬のイメージに一番近いかもしれません。

ただし、本来この十全大補湯を必要とするのは、大病で寝たきりのような状態に陥った体を回復させるときです。かなり重い状態です。元気な方が飲んでもそれ以上は元気になりません。
よく話題になるガンに対する効果ですが、進行して体力低下が著しかったり、抗癌剤の副作用で食事ができず衰弱しているような状態には有効です。あくまで冷えを強く感じり、寒がりであることが前提となります。がん予防には全く効果はありませんのでお間違えのないように。。。

2014年3月23日日曜日

便秘薬じゃありません!桃核承気湯

今回は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。前回の桂枝茯苓丸と同じく駆瘀血剤(古い悪い血を取り除く)の代表方剤の一つです。
ただし、承気湯ですので、便通をつける効果がベースとなっています。桃核承気湯の場合は下腹部に薬効が集中しますので、婦人科系や下部消化器の疾患に主に用いることになります。桂枝茯苓丸は様々な部位での瘀血改善に利用できます。
さて、いつもの様にOTC漢方薬の効能を見てみましょう。“比較的体力があり、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:腰痛、月経不順、月経困難症、月経時や産後の精神不安、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)”とあります。だいたいこの通りで、当てはまる方は飲んでいただいて良いと思いますが、月経時や産後の精神不安と高血圧の随伴症状に関しては、あえて桃核承気湯を用いることはないでしょう。
比較的体力がありと言う表現は毎回のように書いていますが、適切とはいえません。体力があるのは健康と同義語だと思いますからね。“平素丈夫で疲れにくく、のぼせて便秘がち・・・”と言ったほうが適当かと思います。


桃核承気湯を飲むと良い月経不順は、基本的には生理周期が短く生理の量、期間も少ない場合です。ついでに言うと生理血も鮮紅色できれいです。黒ずんでいたり塊が混ざったり、生理も遅れがちでダラダラ続くようなタイプは全く別の漢方薬を使います。

一部で単なる便秘薬として桃核承気湯を奨めているところがあります。あくまで便秘を伴う人の下腹部の瘀血症状を改善する漢方薬です。瘀血が便秘の原因になることもありません。

2014年3月18日火曜日

血が汚れているなら桂枝茯苓丸

今回は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。
この処方は大変便利で色々利用価値がありますが、少し勘違いされて使われていることもあります。いつものようにOTC漢方薬の効能効果から見てみましょう。
“比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび”とあります。
まず例によって体力云々ですが、体力は関係ありませんし、体力があるのは結構なことです。薬を選ぶ上での尺度として何らの役にも、判断材料にもなりません。
桂枝茯苓丸は名前の通り、桂枝と茯苓という生薬が主剤(その漢方薬の性質を決める)となっています。桂枝の温性、茯苓の補性が桂枝茯苓丸の漢方薬としての作用方向を決定しています。※温性・補正に関しては八綱弁証を参考にして下さい
つまり桂枝茯苓丸は体を温め体力を補う働きを持ちます。ですから桂枝茯苓丸が適する人は冷え性で疲れ気味の人ということになります。ただ、この処方の特徴、面白いところは漢方薬としての偏りを治すという性質(温めたり。冷やしたりとか)があまり強くないということです。ある意味どんなタイプの人にも使えるのが桂枝茯苓丸の特徴です。


漢方でいうところの証(しょう)に拘る必要が余りありません。唯一キーワードとなるのが『瘀血』です。‘おけつ’と読みます。一言で言ってしまえば古い悪い血のことです。この古い悪い血の滞りが体の随所で悪さをするわけです。
効能にある‘月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび’これらの症状は基本的に瘀血症状です。ただし、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ以外は瘀血以外が主原因の場合も有ります。見極めとしては複数の瘀血症状が同時に見られるかどうかです。月経痛とニキビとか、肩こりと頭重・しみ等、瘀血が原因として起こりうる症状が複数あれば桂枝茯苓丸で改善できるはずです。リンク先の瘀血の症状も参考にして下さい。
誤って使っても問題の起きる処方ではないので桂枝茯苓丸は特に安心して使える漢方薬のひとつだと思います。また、婦人科専用の薬ではありませんので、男性の方でも打撲や歯茎の出血、痔など、いろいろ使うことが出来ます。

2014年3月3日月曜日

半夏瀉心湯

今回は半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)です。
この処方も正しくないというか、誤った使われ方がされていることが多いようです。
まずいつものようにOTC薬の効能効果を見ると“体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症”とあります。これもかなり訳の分からない効能効果になっています。これを一般の方が見てちゃんと使えるとは思えません。
まず、みぞおちのつかえ感は半夏泻心湯を使う上で欠かせない条件です。この処方の主剤をなしている黄連と黄芩の組み合わすは‘みぞおち’近辺、胸からへその上辺りにかけての不要な熱を冷ましてくれます。急性胃腸炎の場合は悪心・嘔吐を伴っているはずです。嘔吐する場合は食後すぐです。食欲がないとは限りません。お腹が鳴る必要はありません。軟便・下痢はこの半夏瀉心湯の主たる治療対象です。
胃下垂、神経性胃炎は関係ないです。胃弱なら他の方法を考えましょう。どんな飲み方をすれば半夏瀉心湯が効く二日酔いになるのでしょうか、かき氷をつまみに熱燗かな...
口内炎に劇的に効くことがあります。ただ口内炎だからといって飲んでも殆どの場合は効かないでしょう。みぞおちのつかえと軟便下痢が最低条件です。
神経症?どれだけ神経症の範囲は広いのでしょう...


普通はいくらかましな医療用(医師が処方する)の効能効果も半夏瀉心湯ではほとんど同じです。漢方薬の場合は他の薬と違い臨床試験を行って適応症を決めているのでは無く、一部の意見、書物を参考にしているので、的確な効能効果を表示している薬ばかりとは限らない状況です。一時代前のように漢方薬が、特別な知識を持ったカウンセリング主体の専門薬局での販売が中心だった頃は問題はなかったのですが、ネットでの購入が主体になっていくと、パッケージに書かれた一言一句が大きな影響力を持つことになります。



さて、話を半夏瀉心湯に戻しますが、この処方の使い方を簡単に表すと、
“みぞおち辺りに使え感があり、食欲があり喉が渇きやすく、悪心嘔吐を伴う軟便・下痢に効果があります。ただし慢性の軟便・下痢の場合は疲れやすく元気のない方に限ります”
こんな感じでしょうか、
あと、付け足すとすると、半夏瀉心湯は熱証用の方剤です。もともと暑がりで食欲はあり、どちらかと言うと便秘しやすい体質の人向けです。このタイプの人が極端にお腹を冷やすような飲食をしたために急激に胃腸のバランスが崩れ下痢してしまった状態を治療するために作られた処方です。
普段から食欲がなく寒がりな人は全く向きませんので注意して下さい。