2014年2月24日月曜日

元気がないなら補中益気湯

今回は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒”とあります。
胃腸が弱くて、元気がなく疲れやすい人のためのお薬です。ただ重要な項目が抜けています。補中益気湯は体を温めてくれるお薬です。冷えやすい、寒がりな人であることが必須条件になります。冷え易いとは反対の、のぼせやすく暑がりな人でも胃腸が弱く使えやすい人はたくさんいます。このタイプの人が補中益気湯を飲むとかえって不調になります。
冷える、冷えているということも補中益気湯を選ぶ上での重要なポイントになります。
「寒がりで胃腸が弱く、元気がなく疲れやすい人の次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒」ということで良いと思います。


この諸症状の中で一つ注意が必要というか、間違いと言っても良いかもしれません。感冒が入っています。風邪ですね。これでは風邪が治る、風邪に効くという意味になってしまっています。補中益気湯は風邪そのものには効きません。かえって長引かせる事さえ起こりえます。補中益気湯で効果があるのは風邪そのものではなく、風邪をひきにくくなるということです。風邪に対する抵抗力を高めてくれます。この辺りを勘違いして風邪の時に飲んでしまう人も多いし、風邪で処方してしまう医師もいます。注意が必要です。
あと注意点は、血圧が高い人でしょうか、補中益気湯には上へ持ち上げる、下がっているものを上げる効果があります。落ちている気持ちを上げる、落ちている体力を上げる、抵抗力を上げると言った感じです。ついでに血圧も上がります。血圧の高い人、暑がりな人、あと、元気な人は飲まないで下さい。これ以外の人には基本的には良い漢方薬だと思います。栄養剤代わりに、健康維持目的でも使える漢方薬だと思います。

2014年2月18日火曜日

激しい咳に五虎湯!?

まだまだ風邪の季節も続きます。咳・風邪に関わる漢方薬をまたご紹介します。
今回は五虎湯(ごことう)です。
五虎湯は麻杏甘石湯という発熱・咳などに用いる漢方薬に桑白皮という咳を抑える効果のある生薬を追加したものです。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力中等度以上で、せきが強くでるものの次の諸症:せき、気管支ぜんそく、気管支炎、小児ぜんそく、感冒、痔の痛み”とあります。どうしてこういう事になったのか見当もつきませんが、“痔の痛み”って...もはや出鱈目の域ですね。冒頭に書いたように五虎湯は麻杏甘石湯に鎮咳効果のある桑白皮を加えただけです。麻杏甘石湯の効能は“気管支ぜんそく、小児ぜんそく”とだけなっています。これはこれで不十分ですが、一体何処から五虎湯が痔の痛みに効くなんて出てきたのでしょう。
漢方薬の効能効果の文言が決められた際の経緯を詳しく知るわけではありませんが、おそらく一部の無知な専門家と称する者の意見を取り入れたのでしょう。ここではこれ以上掘り下げませんが、こうした見当違いの効能が書かれて一般の人が手にする形で販売されていることに憤りを感じていることが、このblogを始めた一因でもあります。

さて、効能を初めから見てみましょう。何度も書いていますが体力は関係ありません。この場合、体力がある・なしと言うのは物差しとして間違っています。体について表すなら、丈夫であるか虚弱であるかというのが正しい尺度になります。しかしこれも曖昧な表現です。要は漢方で言う実と虚に関することです。
病気に対する抵抗性が強い人、抵抗性が強い時に病気になると、病気に対してより強い抵抗性、反発を見せるので、より激しい症状が現れます。実証の病態です。逆に病気に対する抵抗力がない人、抵抗性が弱い時に病気になると、病気に対する反応が弱く、激しい症状は病状の重さの割に出ません。虚証の病態です。
五虎湯は、この病気に対する抵抗性の強い状態で強い反応を示している時に用いるお薬です。病気に対する抵抗性が強い時は、一気に病気を追い出すために効果の激しい薬を使います。これを間違えて、抵抗性の弱い人に使ってしまえば、余計に弱ってしまいます。
ですから、五虎湯は激しい咳のとき、激しい咳をしている人に使います。コンコンと弱々しい咳をして眠れないとか言っている状態ではありません。ゲホンゲホンと煩くて周りが迷惑する咳です。
もう一つ大切なのは、暑がっていることです。五虎湯は清熱性のお薬です。冷え性や寒がりの人がこのタイプの風邪・咳になることは滅多にありません。
少なくとも喉が渇き、体が火照って熱いことが必須条件です。
喘息では発作止めとして使います。たとえ抵抗性の強い人でも長期間は飲めません。1週間を超えて続けることは基本的にありません。長く続けると食欲がなくなったり動悸がしたりしてくる可能性もあります。
まとめると、五虎湯は喉が渇き暑がっている人の、とても酷い風邪の咳や喘息の発作止めとして効果があります。

2014年2月11日火曜日

長く症状が続くアレルギー性鼻炎に辛夷清肺湯

花粉症の季節になりました。
今年のスギ花粉は少ないようですが、春一番が吹く頃には辛くなっている人も多いかもしれません。
今回は以前にも少し触れた辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)です。
OTC薬の効能効果を見ると“体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)”とあります。
毎度のことですが体力は関係ありません。しかも中等度って。。。
熱感という摑みどころのない表現をしていますが、重要なポイントです。体質的に熱生産が盛ん、つまり冷え性の逆の体質と思っていただければ良いです。はっきりしている人だと、のぼせやすかったり、喉が渇きやすかったり、薄着で冬でも冷たいものを飲みたがったりします。熱証とよんでいる体質です。
ただ、鼻炎の症状に関して言えば、慢性的に鼻づまり、少なくとも2週間以上鼻づまりが続いていれば殆どが熱証の鼻炎症状です。
典型的なスギなどの花粉症は、鼻症状に関して言えば初期はクシャミ鼻水と言った水っぽい症状が中心で、季節が進むにつれ鼻が詰まってきます。アレルギーが長引いているために鼻粘膜が浮腫んでいるためです。こうした典型例の場合は寒湿証の鼻炎で先日ご紹介した鼻療などが良いです。


一方、通年性の鼻炎や副鼻腔炎もそうなんですが、花粉症の時期にクシャミ鼻水から始まっても、すぐに鼻が詰まってしまう場合は熱証の鼻炎ですので辛夷清肺湯が適しています。この鼻づまりは炎症性の鼻づまりですので、冷やしてあげることで治まります。粘りの強い鼻汁が出るなら間違いなくこのタイプです。
辛夷清肺湯の働きは鼻の炎症を鎮め粘りの強い鼻汁をゆるめて出しやすくしてくれます。また清熱性の生薬がかゆみを抑え麦門冬などの潤性生薬も含まれるので目のかゆみにも効果が期待できます。

逆に辛夷清肺湯を飲んではいけない人ですが、寒証の人、いわゆる冷えを感じやすい人ですね。寒がりだったり、手足が冷たいと感じていたり、冷房が嫌だったり、食欲がない人です。このタイプの人は鼻療を飲んで下さい。

2014年2月4日火曜日

風邪でも胃腸炎でも香蘇散

今回は香蘇散(こうそさん)です。
香蘇散は用途が広く安心して使える処方なので常備しておきたいお薬です。
まずはいつものようにOTC薬の効能を見てみましょう。“体力虚弱で、神経過敏で気分がすぐれず胃腸の弱いものの次の諸症:かぜの初期、血の道症”とあります。
毎度のことですが体力云々の表現は的確ではありません。疲れやすい、衰弱しているといった表現で虚証を表すべきです。ただ、香蘇散の場合は実証に用いても効果がありますので、この点は気にする必要もないです。大事なのは、体や内蔵を温めてくれる処方ですので、寒がりの人、冷えている人、あるいは冷えや寒さによっておきた病気に用いるお薬だということです。
香蘇散を一言で言うと、急性胃腸炎のお薬です。生の魚介類を食べ過ぎて胃腸が冷えたり、軽い食中毒になったような場合に用いるお薬です。お刺身のツマとして大葉(紫蘇の葉)が添えられていますが、香蘇散の蘇はシソの蘇です。シソの葉には解毒作用があることが知られています。
胃腸炎の症状の中では吐き気・嘔吐・食欲不振などに効果があります。下痢に対しては強い効き目はありませんが、ここのところ毎年冬に流行るノロウイルスなどに適した処方です。

本来、香蘇散は胃腸炎のお薬ですが、普通の風邪のひき始めにもよく効きます。悪寒から始まる風邪には葛根湯と変わらない位の発汗解熱作用を発揮します。
続けて飲んでも胃を痛めることもないですし、食欲も増しますので、葛根湯が飲めないような人にも使えます。また妊娠中でも服用できます。
効能の最後に血の道症とありますが、これはいわゆる更年期障害のことです。
ですが、これはちょっとどうでしょうね... 
メンタル的な部分では効果は有ります。

香蘇散は‘気’のお薬でもあります。香蘇散に含まれる香附子、陳皮は気の巡りを正してくれます。気の巡りが滞った状態を気滞、気鬱などといいます。
香蘇散はこの鬱な状態、気分の落ち込みを治す効果も持ち合わせています。
うつ病を治すというまではいきませんが、日常的な気分の落ち込みをスッキリさせるぐらいの効果は十分あるかと思います。
まとめてみますと香蘇散は、冷えや寒さ生ものの飲食による風邪(悪寒・発熱・頭痛・咳)、胃腸炎(吐き気・嘔吐)や、平素から寒がりな人の気分の落ち込み・食欲不振などの胃腸虚弱に効果があります
色いろ使い道のある良いお薬だと思います。
ただし普段から暑がりで冷たいものが大好きな人には使えません。
最後にもう一点、
香蘇散はもともとそれほど力のある方剤ではありません。OTC薬の香蘇散はエキス剤が大半ですが、本来の散剤(薬草の粉末で作ったもの)も販売されていますので、できればエキス剤ではなく本来の効果がある散剤をお使い下さい。(流通量は少ないですが杉原達二商店の香蘇散がお勧めです)