2014年12月16日火曜日

麻黄湯=インフルエンザ?

今回は麻黄湯(まおうとう)です。風邪の漢方薬の基本であり、この処方から様々な方剤が作られていますが、今回は麻黄湯の本来の使用法、効果について書いてみます。最近よくインフルエンザに麻黄湯やら、子供の風邪に麻黄湯のような用いられ方を見かけます。それで良い場合もありますが、単純に=(イコール)で結び付けられるものではないので、注意は必要ですし、一定の危険も含んでいます。まずいつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力充実して、かぜのひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり”とあります。例によって体力云々ですが、おそらく殆どの人は風邪をひく時は、疲れていたり、食事が偏っていたりして体力が低下しているのではないでしょうか、体力が充実していれば免疫力も高く、そう簡単に風邪も引かないでしょう。これは漢方薬の添付文書にある効能、適応症を決めていく際に中心になった日本漢方の知識者たちが実・虚の意味を理解していなかったからに他なりません。実・虚は病勢であって病人の体力を表しているわけではありません。実は余分なもの、取り除くべき病邪にとりつかれている病気であって、病人の抵抗力、生体レベルは正常です。邪を取り除けば治る病態です。虚は、足りないものがあるために病気に陥っている状態であり、栄養や基礎疾患、ストレスなどにより免疫力、抵抗力など生体レベルが低下しているために病気になっていルのです。言うまでもなく実と虚の中間点が正常、つまり健康です。


さて、麻黄湯ですが、この処方は寒邪、風邪と言った病邪にとりつかれた病人から邪を取り除く薬です。つまり実の病気です。そして寒邪・風邪にとりつかれた際の症状は悪寒あるいは悪寒を伴う発熱、体のあちこちが痛むなどです。悪寒と体の痛み、これはインフルエンザにもよく見られる症状です。さてここで麻黄湯が使えるのは実証、つまり生体レベルが正常で病邪が取り付いている状態です。疲労感などはなく、だるいといった感覚も殆ど無い状態です。もし生体レベルが低下していると、かえって抵抗力や栄養吸収といった力を減じてしまうことになります。
子供の風邪ですが、麻黄湯を使うと言うことだと、元気な子ということになります。元気な子だって風邪は引きます。ただ、元気な子は代謝が活発であり、余分な熱生産が常に行われており、風邪を引いた場合に寒証ではなく、熱証の風邪(温病)にかかる可能性が高くなります。麻黄湯は寒邪を除く、つまり寒証の風邪を治す薬です。温病の場合は全く違う処方が使われます。




漢方薬を西洋医学の病名と=で結びつける事の問題について麻黄湯を例に書いてみましたが、もう一点、麻黄湯について書くなら、麻黄湯は咳止めです。悪寒やふしぶしの痛みで発熱もあるのなら、葛根湯で発汗解熱したほうが早いでしょう。麻黄湯の最大の特徴は杏仁ですから、強い寒気と関節痛があり咳を伴う初期の風邪に麻黄湯は適しています。

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2014年11月9日日曜日

平胃散:軽い胃薬なら

今回は平胃散(へいいさん)です。
処方名からも推測できる通り胃の漢方薬です。いつものようにOTC薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以上で、胃がもたれて消化が悪く、ときにはきけ、食後に腹が鳴って下痢の傾向のある次の諸症:食べ過ぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振”とあります。また出てきましたね体力中等度。中等度だったら丁度良いので問題ないでしょう。しかも中等度以上となってますね。これははっきり言って間違っています。漢方の証を表現するという意味合いでも問題ありますが、平胃散に当てはまる表現では全くありません。平胃散は疑いの余地もなく虚証用の方剤です。体力中等度以下というなら仕方ないところもありますが、もし体力中等度以上が実証を意味するために書かれているのであれば、かえって胃の具合は悪くなるでしょう。


平胃散は寒虚証の方の胃の不調を改善する薬です。胃が冷えて働きが悪くなっていると大雑把に考えて頂いてよいです。実証の方が胃を悪くする場合は、胃が冷えているということはほぼありません。日常的には絶対ありえないと言ってもよいでしょう。実証、虚証といった用語に関してはぜひ八綱弁証を読んでみてください。




さて、本題に戻りますが、体力云々を除けば効能効果に書かれている症状で使われてよいです。もともと胃の働きの弱い人が食べ過ぎてしまったり、吐き気がして食欲がなくなっていたりと言った状態に効果的です。下痢が起きている場合は他の処方のほうが良い可能性が出てきます。あくまで平胃散は胃の薬だと思って下さい。
もう一言つけ足すと、平胃散は非常に穏やかな薬ですので、もともと食欲がない、食が細い、冷たいものを好まない人には気軽に使っていただけ、常備薬として持って置かれても良いのではと思います。
それから妊娠を望んでいる女性は厚朴が含まれるので飲まないほうが良いでしょう。

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2014年10月27日月曜日

人参養栄湯|気血の衰弱に

今回は人参養栄湯(にんじんようえいとう)です。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血”とあります。
書かれていることは間違いありません。このような状態であれば人参養栄湯は何らかの効果を発揮するでしょう。ただ、これでは何故に人参養栄湯を使うのか、選択の根拠が足りませんし、なんと言ってもこの効能効果は十全大補湯のそれと全く同じです。これでは一般薬として消費者の判断で購買することは不可能です。このblogの意義もそうした問題の解決への一助になればということでもあります。


では、十全大補湯と人参養栄湯の何処が違うかですが、十全大補湯については以前にも書いているとおりです。人参養栄湯ですが、そもそもこの方剤は肺結核患者のために作られた処方です。人参養栄湯もやはり本来は末期的な病状のときに使う漢方薬です。ほとんど起床不能で横になった状態が何日も続き食欲もない病状で、その原因が慢性的な肺の疾患にある場合に使います。




現在は抗結核薬・抗生物質のおかげで肺結核で深刻な状態になることはありませんが、体力回復のために使うことは意味があると思います。ただ、実際に衰弱して栄養状態が悪くなるような場面は結核よりも、肺がんの方が現代ではあり得ると思います。肺がんでの術後や抗癌剤でのダメージからの回復には人参養栄湯は有効かと思います。
広く使われる機会がある薬ではありませんが、処方としては非常に価値のある薬だと思います。


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2014年10月13日月曜日

二陳湯:吐き気止めです

今回は二陳湯(にちんとう)です。
単純で分かりやすい処方です。吐き気止めと言ってよいでしょう。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみると“体力中等度で、悪心、嘔吐があるものの次の諸症:悪心、嘔吐、胃部不快感、慢性胃炎、二日酔”とあります。
例によって体力云々が書いてあります。体力があることは結構なことですし、中等度ってことは‘ちょうど良い’‘健康だ’という意味になってしまうと思います。実・虚を示す指標にしたいのでしょうが、それならば‘疲れやすい疲れにくい’とか‘虚弱’とか他に適切な表現はあります。


ただ、効能効果に書き入れるのはそもそも無理があるのかと思います。効能は病名的な表現にして、注意に漢方的な‘証’に関する記述をしたほうがすっきりするように思います。
証ということで言えば二陳湯は八綱弁証で裏寒虚証と言うタイプに用います。冷えていて虚弱な疲れやすい状態に用います。
寒虚証、寒証の吐き気・嘔吐の特徴として、嘔吐する場合は食後すぐに吐くことはなく、2時間以上、ときに食事から4時間以上してから嘔吐します。
寒証というのはアトニー的、機能低下的な状態ですので、胃腸の動き自体も停滞しています。




二陳湯は長時間胃に停滞している不要な水を除き、同時に胃の動きを高めることで、吐き気・嘔吐を軽減しようという漢方薬です。単純な処方ですので、他の漢方薬との併用もし易いです。前回の人参湯と二陳湯が合わさったのが六君子湯と言う方剤です。人参湯を用いる状態で吐き気もあるということです。
水割りやハイボールのような冷たい薄めたお酒を飲み過ぎた二日酔いの時は二陳湯が有効なこともあります。


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2014年10月2日木曜日

人参湯

今回は人参湯(にんじんとう)です。
人参、白朮、乾姜、甘草の4種類の生薬で構成された処方です。基本的な方剤ですので、人参湯から派生したと考えられる処方はたくさんあります。例えば六君子湯・四君子湯、補中益気湯や参苓白朮散なども基礎骨格は人参湯であり、対応する証も同じです。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみると“体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎”とあります。八綱弁証では裏寒虚証となります。虚弱で冷えやすい体質向けです。ただ、手足が冷えやすいと限定的にしているのはよろしくないですね。何より人参湯を用いる際に一番冷えているのはお腹です。


諸症のなかで嘔吐については、あまり効果は期待すべきではないでしょう。人参湯の主剤の人参は升性(上にあげようとする性質)がありますので、嘔吐を抑える効果はありません。そのために人参湯に茯苓・陳皮・半夏を加えた六君子湯が作られています。嘔吐・吐き気が明らかな場合は六君子湯を使われるとよいでしょう。
急・慢性胃炎ではなく急・慢性胃腸炎と書くべきでしょう。下痢・腹痛が書いてあるのに何故でしょう。





人参湯のエキス剤には白朮ではなく蒼朮が使われているものがあります。人参が主剤格で使われる場合は必ず白朮とペアで使われます。蒼朮では似たような効果はあるものの生薬の性質として異なりますので、白朮を使っているものをお選びになって下さい。(蒼朮と白朮について)


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2014年9月22日月曜日

いつもゆるかったら=参苓白朮散

今回は参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)です。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力虚弱で、胃腸が弱く、痩せて顔色が悪く、食欲がなく下痢が続く傾向があるものの次の諸症:食欲不振、慢性下痢、病後の体力低下、疲労倦怠、消化不良、慢性胃腸炎”とあります。
まず体力虚弱ですね...虚弱なのは治療対象になりますから、体力云々と書かれていてもこれはアリです。
その後もほぼ問題のない効能効果の書き方です。ただ、ひとつ言えば‘病後の体力低下’ですが、病後ではないですね。参苓白朮散が必要ということ完璧に病中です。




単純に言ってしまえば参苓白朮散は胃腸薬です。お腹の薬です。
慢性的にお腹が冷えて働きが悪いために栄養状態も悪くなっている場合に使うお腹の薬です。胃腸が元気に働くようになれば食欲不振や下痢、体力虚弱、疲労倦怠感も改善されることになります。
同じような胃腸の漢方薬に四君子湯や六君子湯などがありますが、最も大きな違いは、参苓白朮散を用いる状態は、胃腸が冷えて働かない上に胃腸に水分が溢れてしまっています。そのために常に泥状〜水様の下痢状態です。痛みは殆ど伴いません。
また、本質的には消化不良ですから、食べても栄養が吸収されず排泄されてしまいます。
寒がりで食欲がなく泥状便が長く続くようでしたら参苓白朮散を試してみるとよいでしょう。
参苓白朮散のエキス剤(顆粒・錠剤)を販売しているメーカーは少ないかもしれません。クラシエの推進会とコタロー、松浦漢方ぐらいでしょうか。在庫店も少ないと思いますので、ネット通販で探したほうがみつかりやすいかもしれません。


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2014年9月15日月曜日

皮膚病にはとりあえず十味敗毒湯

今回は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)です。これは江戸時代の著名な医師である華岡青洲によって考案された処方です。いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと...
面白いことに二通りありますね。ひとつは体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫”となっていて、クラシエの量販店・一般的向けの商品とツムラ、松浦漢方などの商品に書かれています。
もう一つは“化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫”と病名だけ書かれたものでクラシエの推進会商品(特定の店のみで、通販では買えません)とコタロー漢方の商品に書かれています。おそらく製造法の変更などの時に再承認を受ける際に取った簡略な効能だと思います。


ちなみに医療用の十味敗毒湯も全く同じ病名だけの適応になっています。
どちらが良いかといえば、“体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症”、この前提の部分は適正を欠いていると思いますので不要でしょう。まず、いつものとおりですけど体力中等度ってなんでしょ?握力何kgとか、50m走何病以内とかあるんでしょうか...
それに発赤は十味敗毒湯を用いる上で顕著な症状ではないです。化膿に関しても同じです。




八綱弁証で言うと寒実証用方剤ということになりますが、表面的な効果を狙っている方剤なのでこの病名だけの効能で用いて問題無いと思います。ただし慢性化していない軽症の皮膚疾患向きです。
華岡青洲の処方と言いましても、元になっている処方は明らかに荊防敗毒散です。この荊防敗毒散のエキス剤は販売されていなかったかもしれませんが、もともと有名な処方で、主に風邪薬として使われる機会が多いです。清熱作用と発散作用が主ですので、温病と言う悪寒の殆ど無い発熱を伴う風邪、あるいは化膿性の皮膚疾患で発熱を伴うような状態に適しています。
十味敗毒湯はこの荊防敗毒散から忍冬・金銀花と言った清熱剤を取り去ったものです。ですので、十味敗毒湯は強い炎症性の皮膚疾患には向きません。逆に炎症が少ないのに痒みがあるような皮膚炎・蕁麻疹には使いやすい処方と言えます。
実際に試したことはないのですが、軽い風邪のひき始めにも良いかもしれません。
まとめてしまうと、十味敗毒湯は慢性化していない、炎症を伴わない軽い皮膚のトラブルに用いる漢方薬であると言えます。


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2014年9月9日火曜日

芍薬甘草湯:急な筋肉の痛みに

今回は一番使い方が簡単で即効性の漢方薬“芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)”です。いつものようにOTC薬の効能効果を見てみますと“体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものの次の諸症:こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛”とあります。


特に何も言うことはないです。筋肉の痛みを和らげたり、筋肉の痙攣を抑えてくれる漢方薬です。甘草の量が多いので腎臓が悪い人や浮腫が出た人は使用には注意が必要です。そうしたことがない場合は、痛いと思ったら飲んでいただけるお薬です。
筋肉のけいれん・痛みを和らげる働きですが、この場合の筋肉は体を動かす骨格筋・横紋筋でも、内臓筋肉の平滑筋でも効果があります。ふくらはぎの痙攣でも、胃けいれんでも効くと言うことです。ど
んな筋肉でも効くというのは何ら不思議なことではありませんが、これが新薬、西洋薬だと違ってきます。横紋筋の痙攣には筋弛緩剤と呼ばれるお薬。内臓の痙攣・痛みにはブスコパンのような抗コリン薬を使います。



芍薬甘草湯に含まれている芍薬には緊張を緩める働きがあります。精神的な緊張というのもありますが、芍薬の場合は特に体、筋肉の緊張をゆるめてくれる訳です。
甘草は急激な症状、痛みに限ったことではなく、急な発熱、咳みたいなものでも、急な症状へのクッションのような、和らげてくれる働きがあります。ですので、芍薬甘草湯は急激な筋肉の痛みに効果があるということです。
実際にこむら返りが起きた時にどれだけ効果があるかは、試してみてください。
それからもう一点、長期連用する薬ではありませんので、予防のために飲むということはやめて下さい。


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2014年8月31日日曜日

おもいっきり弱っているなら十全大補湯

今回は十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)です。
比較的分かりやすい処方ですので、ドラッグストアや薬局で購入してお飲みになる際にもお求めやすいと思います。とにかく肉体、精神が弱っている時に使います。弱っていない人には効きません。
さて、いつもの様にOTC漢方薬の効能効果を見てみましょう。“体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血”と書いてあります。効能効果でよく見かける‘体力がある’‘体力が中間’といった表現に比べれば‘体力虚弱’はいくらかマシかもしれません。ですが念のため虚弱を辞書で調べてみると‘体が弱いこと’と書いてあります。わざわざ体力と限定する意味が分かりません。体が弱い人、弱っている人という事で良いでしょう。
諸症に関しては問題なしですね。とにかく体力・抵抗力・気力が弱っている状態を回復させる漢方薬です。


では、どのくらい弱っているかというと、ほとんど寝たきり、ほとんど死にそうな状態です。そこまで弱っている人が飲んで元気になるならば、元気な人が飲んだらどれだけ元気になるのだろうかと思ってしまいます。ですが、残念なことに元気すぎる人は飲まないで下さい。血圧が上がったり、浮腫んだりといった心配が出てきます。それに元気な人が飲んでもあまり効果は感じません。それでは少しだけ弱っている人、少し疲れている人が飲んだら・・・悪く無いと思います。ただ、エナジードリンクのように一時的に元気にしようという薬ではありませんので、休養を取ることが大事です。基本的には長く患ったり、大病をして体が弱っている状態を回復させるための薬ですので・・・




健康維持の目的で十全大補湯を長期間続けたり、十全大補湯の成分を含有した栄養剤を日常的に飲まれている方は多いかと思います。それはそれで一定の効果は有りますので結構なことだと思います。ただし血圧が高い方、浮腫みやすい方、暑がりの方はやめておいて下さい。


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2014年8月24日日曜日

三黄瀉心湯

今回は三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)です。
以前に投稿している黄連解毒湯に便秘の症状が加わったようなものです。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの次の諸症:高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症”とあります。



分かりやすい処方なので使い方も難しくはありません。とにかく余分な熱が発生している状態ですので、暑がりで、喉が渇き、常に冷たいものを欲します。
冷えを感じることは全くなく常に活動的でイライラしてじっとしていないような人向きです。




過剰な熱生産、実熱からくる症状ですから、イライラ・のぼせ、不眠や頭痛と言った症状が必ずあります。
実際的な使用目的としては黄連解毒湯と同じようにイライラカッカと落ち着かない状態でしょうか、ただし便秘がちで食欲があるのも必須条件です。


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2014年8月10日日曜日

腰痛・坐骨神経痛は疎経活血湯

今回は疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛”とあります。
そのものずばり痛みシビレの漢方薬です。前提になる体質は寒虚証ですので、体力がない、疲れやすい、寒がり、冷えを感じる体質となります。



腰痛、神経痛の原因である瘀血(古い血の滞り)と痰湿(湿気・水はけの悪さ)を除く働きがあり、典型例は坐骨神経痛ですが、寒虚証であることさえ外さなければ広く痛み・しびれの症状に使える処方です。急性的なものに向きません。慢性経過した症状を改善していく薬です。




早い段階で効果が出てくることが多いですが、じっくりと治していく効き方が本質ですので、少し続けて服用すると良いです。使いやすい処方ですので、慢性の痛み・しびれ(どちらかと言うと腰から下)にはファーストチョイスとして良いと思います。


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2014年8月3日日曜日

小柴胡湯に限った事じゃないけど

今回は小柴胡湯(しょうさいことう)です。
基本方剤として幅広く使え、他の処方との組み合わせでも使いやすい処方です。
ただ、実際にはあまり使われていないのかもしれません。20年以上前のことでしょうか、日本での、特に日本の医療機関での漢方薬の使われ方の問題が露見する事故が続きました。小柴胡湯の肝炎患者への使用で起きた死亡事故です。小柴胡湯は肝炎にも効果があります。ただし熱虚症という体質(証)の人の肝炎に限ります。当時だけではなく今もそうですが、特に医療機関では証を無視した適応症のみで漢方薬が使われています。この問題は他所で詳しく書いていきますが、漢方薬を飲む際は必ずその時点での自分の証を把握して下さい。証に合わせて漢方薬を選ぶことで100%の効果と0%の副作用が実現できます。



証を把握すると言っても八綱弁証さえ分かっていれば十分です。
さて、いつもの様に小柴胡湯の効能効果を見てみますと“体力中等度で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振、はきけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状”とあります。体力云々は毎度のことなので無視します。先ほどの八綱弁証で言うと、《熱虚症》という体質が小柴胡湯に対応する証です。リンク先の熱証と虚証のところに当てはまる体質です。熱か寒か、実か虚か、当てはまる項目が多い方がご自身の証です。ただし上に書いてある項目のほうが優先されますので少しだけ注意して下さい。
効能効果に話を戻しますと、“ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく”とありますが、小柴胡湯は基本的に胸のあたり、食道から胃のあたりかけての脇部の症状を改善します。臓器で言えば食道、肺、胃、十二指腸、膵臓、肝臓、胆のうと言ったところでしょうか、心臓は血管も含むので別物と考えます。風邪から吐き気がして胃炎症状があるのが本来の適応かと思います。咳、気管支症状も含まれますし、胸のあたりの熱をとって、体力を回復させるというのが小柴胡湯の効果の本質です。熱証ですので食欲は増大している場合もあります。口の苦味は必須条件にはならないですし、白苔に至ってはただ混乱させるだけでしょう。なんで小柴胡湯に限ってこんなことが効能に書かれているんでしょうか、不明です。



毎日のようにお酒を飲む機会があって胃や肝臓が疲れ気味の人に飲んで貰っても良い処方です。ただし、熱虚症であることが絶対条件です。


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2014年7月27日日曜日

七物降下湯は高血圧の薬なの?

今回は七物降下湯(しちもつこうかとう)です。多少なりとも漢方をかじった人なら必ず知っている大塚敬節氏ですが、その大塚さんが自分のために作った処方が七物降下湯です。日本の漢方を象徴する一人だと思いますし、また、日本漢方を混迷へと導く一役を買った人物だと思っています。このことはまた別の機会に何処かで書くとして、今回の七物降下湯が実際にエキス剤としてドラッグストア、薬局で売られ医療用漢方薬としても使われているのも事実です。その効能と使い方が現実の効果に照らしてみて、どんなものかと考えてみたいと思います。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの次の諸症:高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重) "とあります。
幸いなことに“高血圧に伴う随伴症状”に用いるようで“高血圧”そのものに効くとは書いてありません。その通りで七物降下湯は高血圧症の血圧を下げません。それどころか血圧を上げる可能性さえあります。絶対に誤解しないで下さい七物降下湯は高血圧の薬ではありません。




この処方は血液を作り浄化する四物湯に釣藤鈎、黄柏、黄耆を加えたと考えて良いでしょう。本人もそのようなことを書いていたような気がします。
四物湯は結局のところ体液量を増やすわけですから血圧を上げる可能性を持ちます。それ以前に衰弱して干からびそうな人に使う薬ですからね。釣藤鈎は頭痛のため、黄柏はのぼせを取るために入れたのでしょう。
黄耆は、黄耆の作用で代表的なのは升提作用、下がってはいけないものを持ち上げる作用、場合によってはより積極的に上げようとします。
もちろん血圧に対しても、下がっていれば上げるし、上がっていても、より上げようとしてしまう可能性も持ちます。
なぜ血圧を上げる黄耆が入っているのでしょう。しかもベースは四物湯です。もはや七物降下湯が高血圧の薬でないことは疑いようもありません。






本当のことを言うと七物降下湯は脳梗塞・脳出血後の後遺症改善の目的で作られています。ですから、もはや高血圧ではない人に使います。倒れて衰弱して気力も萎え体の動きも不自由になってしまった方に使われる方剤です。たしか大塚氏も血圧で倒れたあとにこの処方を作ったかと思います。
それがいつの間にか七物降下湯=高血圧という擦り替えが行われたのかと思います。
OTCだけでなく医療用の七物降下湯の添付文書にも効能は高血圧の随伴症状であって高血圧に効く、血圧を下げるとは書かれていません。
非常に適用範囲は狭いですが、万が一に脳梗塞、脳出血で倒れ、気力がなく貧血気味で体が衰弱し、頭痛・のぼせが主な悩みであれば七物降下湯を試して下さい!



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2014年7月20日日曜日

柴胡桂枝乾姜湯=誤治を治すはずが...

今回は柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)です。
この処方も誤解されて使われることが多いかもしれません。名前からしても内容から見ても小柴胡湯の派生方剤ですので、その適応体質は小柴胡湯と同じです。熱虚証(ねっきょしょう)という証が第一の条件になります。病気に対する抵抗性が低く、余分な熱産生あるいは熱による病を患った状態です。
一般用医薬品・OTC漢方薬の効能効果を見てみると“体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇きがあるものの次の諸症:更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎”とあります。


かなりビックリですね。いきなり冷え性ときましたね...。柴胡桂枝乾姜湯の構成生薬の中心は柴胡と黄芩です。疑いようもなく体を冷やす生薬です。貧血気味?貧血を治す作用、血を作る働きを持つ生薬はひとつも入っていません。
漢方エキス製剤の効能効果は通常の化学成分の医薬品の効能効果との整合性を図ろうとしたためか、おかしな表現がなされているものが少なくありません。なかでもこの柴胡桂枝乾姜湯の効能効果は以前から気になっていましたが酷いですね。
間違った漢方薬の使い方を誤治(ごち)と言います。正しく証を見立てることが出来ずに本来は用いるべきではない処方を使ってしまうことです。柴胡桂枝乾姜湯の場合は効能効果通りに使えば間違いなく誤治になります。冷え性は悪化するし貧血はいつまでたっても治らないでしょう。





では、柴胡桂枝乾姜湯は何の薬か?
この柴胡桂枝乾姜湯は風邪薬です。正確に言うと、本来は取るべきではない方法で誤って風邪を治そうとして、かえって悪くなった、あるいは異なる症状に向かってしまった場合に使う薬です。具体的に言えば熱証の風邪なのに葛根湯などの温性の発散剤などで悪化させ、かえって風邪を深いところに押し込んでしまった状態です。まさに誤治です。
風邪が体表ではなく体の内部に押し込められ発汗により水分異常(津液不足)が起きて不眠症や神経症、更年期様症状や動悸・息切れのような自律神経失調症状を表しているものの治療を目的に作られたのが柴胡桂枝乾姜湯です。
このことを応用して、長期間のストレス等を受け続けていたり、急激なストレスで体調を崩したりした場合の、不眠症・神経症や、自律神経失調症的な症状に柴胡桂枝乾姜湯を用いることが出来ます。
ただし、この場合は冷え性などではなく、のぼせたり・体が火照ったりしやすく、喉が渇くことが前提条件になります。いわゆる更年期障害もあてはまりますね。水(津液)の不足がありますから、肌は乾燥してカサつきがちです。


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2014年7月13日日曜日

五苓散:水を出す漢方薬

今回は五苓散(ごれいさん)です。
一言で言ってしまえば‘不要な水を出す’漢方薬です。いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔”とあります。体力云々は虚証・実証を表現したいのだと思いますが、これは病気に対する抵抗性(体力?)と病気の侵襲力との関係ですので、体力云々だけで判断できるものではありません。ちなみに五苓散は虚証用方剤です。摂取した水分量を処理するには処理能力が不十分なために下痢、浮腫みのような症状が出ています。


さて、のどが渇いて尿量が少ないと前提されていますが、誤解を招きやすい表現です。単純に水分不足で、極端に言えば脱水状態でも喉が渇き尿は出ません。五苓散を使うべき状態とは真反対です。熱・寒を間違えて使っても大きく問題はない処方なので‘津液’についてまで踏み込まなくても良いかと思いますが、生脈散の項で少し触れていますので参考にして下さい。不要な水が多すぎるために、相対的に必要な水(津液)が不足しているために感じる喉の渇きが五苓散の対症になる喉の渇きです。



病名・症状として挙げられてる事柄は適切だと思います。“水様性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔”であれば五苓散で効くと、西洋医学的、病名的な判断で使って頂いても構わない方剤だと思います。実際に、本来の対症になる熱虚症以外の状態で使っても一定の効果は出ています。
最後に、二日酔いの状態が五苓散を使う典型です。さんざん水?を摂ったのに喉が渇いているし浮腫んでいるっぽいし頭は痛いし気持ち悪い・・・まさに二日酔いですね。一度試してみてください!


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2014年7月6日日曜日

夏風邪の漢方薬は藿香正気散

今年の梅雨は例年以上に雨が降っているようですが、7月に入り梅雨明けも近いことと思います。さて、今回は藿香正気散(かっこうしょうきさん)です。一言で言えば夏風邪の漢方薬ということになります。
いつものようにOTC(一般薬)漢方薬の効能効果を見てみましょう。“体力中等度以下のものの次の諸症:感冒、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠”とあります。



季節によって流行する風邪のウィルスも異なってきますが、漢方的に見ても冬と夏では風邪の症状も違ってきます。以前、銀翹散について書いた際に『暑い風邪』『寒い風邪』と言う表現を使いました。簡単にいえば『暑い風邪』は喉が痛んで体が火照ると言った熱さを感じる症状が主な風邪です。『寒い風邪』は鼻水が出て寒気が強いと言った寒さを感じる風邪です。やはり冬は『寒い風邪』が多くなります。かと言って夏場は『暑い風邪』ばかりかというと、そうでもありません。冷房の冷えや朝の冷気にあたることで『寒い風邪』にかかることも少なくありません。藿香正気散は夏の『寒い風邪』に使う漢方薬です。症状としては、寒気を伴う軽い発熱、食欲不振、軽い胃腸炎、鼻水、軽い咳に効果があります。

さて、夏ですから冬のような強い悪寒を伴う風邪は少ないです。でも同じ『寒い風邪』なら、その代表的な漢方薬の葛根湯でも良さそうなものです。しかし、藿香正気散の存在価値があります。葛根湯は強い発散作用で発汗解熱させる漢方薬です。寒気がするとは言え夏ですから、気温湿度は高いので強く発汗させたら汗が止まらなくなり、かえって体力を消耗させ、下手をすれば風邪をこじらせてしまいます。藿香正気散は軽い発散作用を持ち胃腸を温め、咳のど鼻の症状を和らげる生薬を加えています。弱めの作用であることがかえって夏の『寒い風邪』に丁度良い効果を発揮します。
藿香正気散の販売メーカーも少ないですが、手に入らなければ香蘇散で代用はできるかなと思います。ちなみに夏の『暑い風邪』も銀翹散で大丈夫です。




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2014年6月29日日曜日

牛車腎気丸は腰痛・膝痛です

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)についてです。
いつもの様にOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少し、むくみがあり、ときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)”とありますが、この方剤はもともと八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたもので、適したタイプ・体質は全く一緒です。先日、投稿した八味地黄丸の記事を参考にして下さい。効能効果に書かれている内容も‘むくみ’に関して牛車腎気丸で少し強調されている程度の違いです。


実際の使い分けは牛車腎気丸に加えられた牛膝と車前子の効果を知ればわかります。
まず、牛膝と車前子はどんな役割をする生薬かというと、どちらも水を出す効果があります。体内の不要な水、本来は排泄されていないといけない水を除く作用があります。牛膝の薬効は下へ向かいます。下半身に効果を集中します。他の利水剤である車前子や沢泻も牛膝に引きづられ下半身の不要な水を取り除こうとします。下半身の不要な水とは何でしょう?脚のむくみ等も当てはまりますが、牛膝の名前の通り‘膝’ですね、膝に溜まった水を除こうとする効果が牛車腎気丸では強調されれいるわけです。もう一つ牛膝には駆瘀血作用があります。瘀血に関しては‘瘀血について’を参照して下さい。おおまかに言えばこの場合は血流の改善ということになると思います。




まとめますと牛車腎気丸は、八味地黄丸が向く人で、下半身の浮腫み血行不良、特に膝痛で困っている方に的を絞った漢方薬ということになります。もちろん八味地黄丸でも膝痛・腰痛に効果はありますが、牛車腎気丸は膝痛・腰痛により効果があるように作られているということです。


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2014年6月23日月曜日

八味地黄丸

今回は八味地黄丸(はちみじおうがん)です。
今から25年ほど前、薬局を始めたばかりの頃に「はちみつがん下さい!」とお婆さんがやって来ました。「はちみつがん?蜂蜜丸?・・・あぁ八味丸ですね」
もともとは生薬の粉末を蜂蜜で練り固めた丸剤ですからあながち間違ってもいません。
現在、日本で販売されているOTC漢方薬にも、丸剤の物とエキス剤(生薬から煮だしたエキスを錠剤・顆粒にしたもの)とがあります。八味地黄丸の場合はもともとが丸薬ですので、基本的には丸剤のものを買われて飲んだほうが良いでしょう。ウチダ和漢薬や第一薬品工業から発売されています。


さて本題ですが、いつもの様にOTC薬の添付文書を見てみましょう。“体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ”とあります。
基本的に高齢者を対象とした薬ですから、虚弱で疲れやすいことが目安になります。漢方ではの衰え(腎虚)が老化であると考えます。八味丸は体、特に下半身を温めていく薬ですから、当然、冷えを感じる寒がりの人向きとなります。腎虚ですので、排尿の異常が起きることもあります。男性の場合だと前立腺肥大に伴う症状およびそのものに対する効果が期待できます。口渇は無視して良いと思います。
下半身の冷えと痛みは一定期間続けていけば効果があると思います。高齢者のかすみ目は白内障を意味していると思いますし、日本漢方では八味地黄丸が白内障に効果があると喧伝している時期がありましたが、腎虚の白内障は熱証ですので六味丸、正確には六味丸+枸杞子・菊花の杞菊地黄丸を使います。八味地黄丸は適しません。寒証の白内障であれば脾胃気虚が本質ですから補中益気湯などでしょうか・・・



耳鳴りは高血圧と関係なく老化からくるものであれば八味地黄丸が聞く場合はあります。肩こりや頭重を感じるような高血圧に使うことはないでしょう。四肢が冷えて末梢血流が悪いために測ってみたら意外と高いと言った高血圧に向いているかと思います。
手軽に老化予防の保健薬として用いて良い薬だと思いますが、熱証の方、つまり暑がりでのぼせやすいような方は逆効果ですので飲まないで下さい。

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2014年6月15日日曜日

痛みだしたら桂枝加苓朮附湯

今回の漢方薬は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)です。クラシエ薬品などでは桂枝加苓朮附湯と言う桂枝加朮附湯に茯苓を加えた処方で販売してます。実質的には大きな違いではないので同じものと思って頂いて良いです。
さて、いつもの様にOTC薬の効能効果を見てみると“体力虚弱で、手足が冷えてこわばり、尿量が少なく、ときに動悸、めまい、筋肉のぴくつきがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛”とあります。
体力虚弱と言っても、曖昧さがあると思います。重要なのは本人がどう感じているかということで、疲れやすい、だるいと言ったことを感じていれば虚証、虚弱であるとしていいと思います。


この効能の中で一番需要なのは“冷え”です。手足の冷えと言うよりは四肢の冷えとすべきでしょうね。また、全身冷えて寒がりだというのも含まれます。裏返して言うとこの桂枝加朮附湯という漢方薬は温める作用により効果を発揮するわけです。
尿量は多くなければ問題無いです。頻尿で量もしっかり出ているということになると他の処方も考えないといけません。



桂枝加朮附湯は体内に貯留している不要な水と冷えが重なって関節痛や神経痛が起きているのを治す漢方薬です。
動悸、めまい、筋肉のぴくつきというのは特に重要ではありません。無視してよいです。
まとめてみますと、冷え特に四肢の冷えを感じ浮腫みやすいなど水分代謝の悪い傾向のある人の神経痛、関節痛に桂枝加朮附湯は効果があります。
もう一点、桂枝加朮附湯が適しているのは急性期の関節痛、神経痛。または、落ち着いていたのにまた急に痛み出したような場合です。

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2014年6月8日日曜日

荊芥連翹湯

今回は荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)です。
花粉症の季節にも話題にはなりますが、実際は鼻の症状に関してはアレルギー性鼻炎ではなく蓄膿症、慢性鼻炎のほうが向いているでしょう。
まずはいつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび”とあります。
またまた意味不明です。体力云々は表現として適切ではないし、あえて言えば体力無い人のほうが向いています。
皮膚の色が浅黒い?何が言いたいのでしょうか。。。すぐに削除したほうが良いと思います。
手足の脂汗...何を意味しているのでしょう?手足の火照りは重要な指標になります。
腹壁が緊張?もうこの効能の前提部分は荊芥連翹湯について何の意味もなしてないですね。
次の諸症以降の病名は適切です。蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、ニキビに荊芥連翹湯は効きます。ただ、慢性化した症状に対して有効ですので半年、一年と比較的長く続けて頂く必要にある処方です。



荊芥連翹湯が適する体質としては、熱虚証用の方剤ですので、喉が渇きやすく暑がりでのぼせやすく、疲れやすい人ということになります。
荊芥連翹湯は構成生薬が17種類と大きな処方であり、逆に一つ一つの生薬量は少なく、効力としては弱い、効きづらいと言わざるを得ません。漢方薬というのは構成生薬が多くなるほど対象となる証が限定され効きづらくなります。あまり第一選択として使ってほしいとは思わないですね。

蓄膿症の症状でお悩みの方!
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2014年5月25日日曜日

寝汗やアトピーにも黄耆建中湯

今回は黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)です。
この処方は小建中湯という漢方薬に黄耆と言う生薬を加えたものです。黄耆という生薬は気の働きを高める効果があります。つまり元気が出て疲れにくくしたり、感染症などに対する防御力を強くしたり、皮膚を丈夫にしたりする作用があります。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力虚弱で、疲労しやすいものの次の諸症
虚弱体質、病後の衰弱、ねあせ、湿疹・皮膚炎、皮膚のただれ、腹痛、冷え症”とあります。このとおりで良いと思います。大切な前提としては“疲れやすくて冷えやすいことです”
とくに、寝汗と皮膚関係の症状で飲む方が多いのではないかと思います。




黄耆建中湯を購入する上で注意が必要です。
先に書きましたとおり、黄耆建中湯は小建中湯に黄耆を加えたものです。
内容としては小建中湯(ケイヒ、ショウキョウ、タイソウ、シャクヤク、カンゾウ、膠飴)にオウギを加えたものです。しかし、残念なことにこの通りの内容になっているものは、確認できた範囲では小太郎漢方の黄耆建中湯エキス細粒Gだけでした、他のメーカーのものは膠飴が入っていません。膠飴とは水飴のことで、一日分で10〜20g使います。エキス剤にした場合にかさが増えますし、粘稠性で扱いにくいので加えていないのだと思います。膠飴が入らないと、少し芍薬が多く入った、全く別の処方である桂枝加黄耆湯になってしまいます。ご購入の際にはご注意下さい。
それから、残念ながら小太郎漢方の製品はネットでは販売されていないのでお近くの薬局に問い合わせると良いかと思います。
小太郎製薬株式会社


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2014年5月20日火曜日

のぼせとイライラがあれば加味逍遥散

今回は婦人科症状によく使われる加味逍遥散(かみしょうようさん)です。
加味逍遥散と当帰芍薬散、桂枝茯苓丸を一緒に並べて生理不順、生理痛、冷え性、更年期障害の漢方薬として論じられることがよくありますが、実際に比較して選ばなければならないほどの共通点はありません。どれも全く違った方向性、薬向を持っていますので、一般の方でも簡単に使い方がわかるはずです。
当帰芍薬散を使う場合の目安は浮腫みです。冷えがちで疲れやすく浮腫むこと、この3つが揃わない限り当帰芍薬散は使いません。
桂枝茯苓丸は、瘀血という状態を改善します。瘀血についてはこちらを参考にして下さい。瘀血が主な症状、原因であるのであれば体質問わず桂枝茯苓丸を使ってかまいません。

さて、本題に戻り加味逍遥散です。
加味逍遥散のキーワードは肝気鬱結と虚熱です。聞きなれない言葉だと思いますので、先にいつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症”とあります。
まず“体力中等度以下”、適切な表現ではありません。疲れやすい、あるいは体力低下状態と理解して下さい。“のぼせ感”、これが重要なポイントです。本質的には暑くないんです。この場合は虚熱という嘘の熱を感じてのぼせたり、火照ったりしています。この熱は陰陽バランスの崩れのために生じています。子供の頃に、大人になってもあるかもしれませんが、遊びすぎて疲れきり手足が火照ってなかなか寝付けなかったことはないでしょうか、これは体は消耗して弱っているのに気持ちが高ぶってしっかりしているために、体よりも元気な気持ちが熱として表れている状態です。これを治すには、冷やすのではなく体を元気にしてあげなければなりません。



つぎに“精神不安やいらだちなどの精神神経症状”。これが2つ目のポイント肝気鬱結です。
精神的な問題は肝で処理していると考えていますが、その肝での気の流れが滞ってしまっている状態です。肝が健やかであればイライラや不安、不眠などは殆どありません。
肝気鬱結の生理への影響は、生理が来る前の生理痛、精神症状、いわゆるPMSですね。それと生理周期は早まることが多いです。
また肝気鬱結で起きる症状自体が更年期障害とも重なります。
まとめると、加味逍遥散は疲れやすく、体力が低下し火照りやのぼせを感じ、イライラや不安・不眠などの精神症状を伴う人の生理不順、月経前緊張症、更年期障害などを改善します。ちなみに虚熱があれば男性の更年期的な症状にも用います。


PMSの症状でお悩みの方!
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2014年5月12日月曜日

温経湯

今回は温経湯(うんけいとう)です。
婦人科向けの方剤ですね。生理不順や閉経期の体調不良といったことに使います。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症:月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)”とあります。体力云々はいつものことなので触れません。体が弱っている体力が低下している事が前提となります。全身的に体が冷えている方向にある人に用いるので、手足のほてりというのは強調して書かれるべきではないでしょう。貧血が進んでいるために‘血虚・陰虚’の状態にあるために虚熱として、偽りの熱・ほてりを感じることがあります。そこに拘るとこの処方を使う人はかなり限定されてしまうでしょう。煎じ薬であれば手足のほてりがない人には麦門冬、牡丹皮を減量することも可能ですが、このままでも問題無いです。
重要なのは冷えていることと乾燥していることです。


温経湯を用いるのは一定以上の貧血、量的あるいは質的な意味でも血の状態が悪い場合です。そして、むくみなどは無い、皮膚が乾燥し唇も乾きやすい燥証状態の人に適します。
温経湯を用いる生理不順は、生理が遅れがち、あるいは長い期間生理が来ない。おりものが多いと言ったタイプです。効能には皮膚炎やしもやけ・手荒れなどがありますが、あくまで生理不順に陥った原因に付随するものですのですので、生理不順、冷え、貧血傾向がなければ“不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)”と言った症状は治療対象になりません。

もう一つ、温経湯はよく不妊治療に用いられているようですが、この処方単独では無理です。補血は重要な不妊治療の要素ですが、少なくとも補腎が同時に行われない限り効果はありません。また、余談ですがこの補腎目的で八味地黄丸を温経湯や当帰芍薬散と併用して不妊治療をしようと処方する病院もみかけますが、妊娠を望む人に附子剤の長期使用はいかがなものかと思います。

漢方薬を有効に使いましょう
秀峰堂中医学研究所

2014年5月6日火曜日

茵陳五苓散:二日酔いですね

今回は茵陳五苓散(いんちんごれいさん)です。以前に茵蔯蒿湯については書きましたが、効果・効能としてはほぼ同じです。違いは、茵蔯蒿湯実証(余分なものが付いているために病気になっている)の人に使い、茵陳五苓散虚証(足りないものがあるために病気になっている)の人に用います。実証・虚証の見分け方は八綱弁証を参考にして下さい。
さて、いつもの様にOTC漢方薬の効能効果を見てみますと体力中等度以上を目安として喉が渇いて尿量が少ないもののじん麻疹、二日酔、浮腫み、嘔吐の諸症とあります。
体力云々に関しては相変わらず意味不明です。先にも書いたように茵陳五苓散は虚証に用います。つまりその人の体力が低下している状態、あるいは体力が低下しやすい、つまり疲れやすい人に使います。体が衰弱していれば病気の目安になりますが、体力があることが病気の目安になることはあり得ないでしょう。
あえて言えば茵陳五苓散は体力低下が低下している人に用います。

つぎに、“のどが渇いて尿量が少ない”これはとても大事なポイントです。茵陳五苓散という漢方薬の最大の効果は体内の不要な水を排泄させる作用です。尿が思うように出ない状態、体の中に湿気が溜まっている状態です。一番わかり易いのは二日酔いの状態です。日本酒でもワインでもお酒はみんなアルコールです。ですが実際はほとんど水です。このアルコールの混ざった水を散々飲んだために処理しきれなくなり体の中が水浸しになっているのが二日酔いです。下からでなければ上からだそうとする。これも普通の生理現象かもしれません。水浸しなのに何故尿が出ないのか、これはアルコールの混ざった水を大量に飲んだために、相対的に体の中のきれいな水の比率が減り、水分不足と体が判断してしまい尿が出にくくなっています。また水不足と勘違いしているので喉も渇きます。
喉の渇きにはもうひとつ熱証という要因があります。熱証については先述の八綱弁証を参考にして下さい。効能効果にも熱証の要素はもう少し書いたほうが良いでしょうね。暑がりとか、のぼせ、手足のほてりとか、、、

本来は茵陳五苓散という薬は肝炎や胆石・胆嚢炎などで用いるもので、黄疸がひとつの目安になっています。今の日本で黄疸が出てる状態でドラッグストアや薬局に漢方薬を買いに行く人は少ないと思います。実際の利用としては、二日酔いに一番いいですね。肝臓の熱も冷ましてくれます。飲む前に飲んでも良いのですがトイレが近くなるので注意して下さい。蕁麻疹にも有効ですが、梅雨時から夏に向かう頃でしょうか、湿度と気温が高い時期は茵陳五苓散が向くかもしれません。寒冷蕁麻疹や原因がはっきりしている蕁麻疹は他の方法を考えて良いでしょう。

もう一点、茵陳五苓散を発売しているメーカーは少ないようです。小太郎漢方で出てはいますが、メーカーの方針でネットショップでの販売を禁止しているようです。漢方薬を扱っている店に直接問い合わせてみてください。

2014年4月21日月曜日

大柴胡湯=他の処方と組み合わせるのが効果的

今回は大柴胡湯(だいさいことう)です。
単独での使用機会は少ない漢方薬かもしれませんが、基本的な方剤ですので応用範囲が広く、他の処方と組み合わせることでより効果的な使い方ができるのが大柴胡湯です。
まずいつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症”とあります。毎度のことですが体力云々の表現は適切ではありません。大柴胡湯は薬効の方向性がはっきりしているので、適している人の見た目の特徴もはっきりします。ガッシリした体型で肥満傾向のある人に向いています。痩せているだけで大柴胡湯は向かないと判断してよいです。しかし、体力の充実と体型は比例するものではありませんよね。これではマラソン選手は体力がないことになってしまいます。

さて、本題に戻して“体力の充実・・・”の体質的な前提の部分は“疲れにくく食欲が旺盛で便秘がちなものの次の諸症:”と言ったところで良いと思います。熱実証という体質です。
“脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく”の部分は特異的な目安にはならないので無視してよいです。具体的な症状としては“胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症”この全てに効果はあると思います。ただ、大柴胡湯単独で用いてどの程度かなという点です。胃炎は急性胃炎で食欲はあるのに吐き気が強く、痛みとむかつきがある状態です。五苓散との併用も嘔吐には有効です。ただ、このタイプはどちらかと言うとガスターみたいなものを飲んだほうが速いです。
便秘には効果がありますが、そのためだけに飲むべき処方ではないです。他の場所に作用しすぎてしまいます。基礎疾患として胆嚢炎や胆石、膵臓炎、肝炎などがある場合にはちょうど良い薬ですね。胆嚢炎の場合は桂枝茯苓丸・桃核承気湯などの駆瘀血剤と併用するとよいでしょう。膵臓炎は、糖尿病もそうですが、六味丸と併用します。肝臓疾患で効果があるのは主に脂肪肝でしょうか、高血圧関係の症状も含めて肥満に原因のほとんどが有りますので、とくに食欲が過剰で、実際に大食で、いわゆるメタボ体型なのに疲れずよく働ける人は大柴胡湯でピッタリです。
よく言われる防風通聖散よりも大柴胡湯のほうが長期服用の心配は少ないです。
ただ、あくまで疲れにくく食欲旺盛でガッシリした便秘がちの人である事が前提です。

2014年4月14日月曜日

越婢加朮湯:急性の時だけですよ

今回は越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)です。
そんなに使われる機会が多い漢方薬ではないと思いますが、急性的はむくみや関節痛には早い効果があります。ただそれなりの注意も必要な処方です。
まずはいつものようにOTC薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以上で、むくみがあり、のどが渇き、汗が出て、ときに尿量が減少するものの次の諸症:むくみ、関節のはれや痛み、関節炎、湿疹・皮膚炎、夜尿症、目のかゆみ・痛み”とあります。
例によって体力云々はいただけません。中等度ってどのくらいでしょうね・・・?
さて、この越婢加朮湯は疲れにくく普段から体が丈夫な人にだけ使います。疲れやすい。疲れているというだけで飲むべきではないと言えます。
薬の作用としては、余分な水分を取り除く働きです。不要な水が体に溜まっている。それが浮腫みです。関節に貯まれば腫れ・痛みが起きます。ここで大事なのは余分な水分を貯めこんでいるのか、上手く排泄できないために不要な水が残ってしまっているのかです。
前者であれば積極的に水を出してあげれば良いし、後者の場合はきちんと不要な水を出せるように元気づけてあげなければいけません。越婢加朮湯を用いるのは前者です。
積極的に水を出す、つまりそれなりに強い性質を持った生薬を使っています。
もう一度、効能効果に戻りますと、むくみがあり尿量が減少。水が出て行かないということです。のどが渇き、この越婢加朮湯は体を冷やす漢方薬です。喉が渇きやすく暑がりであることもこの処方を用いる条件になります。
汗が出て、なんでこんなこと書いているんでしょう?汗は関係ないですし、どちらかと言ったら汗が出にくいはずです。原典を読み違えているんでしょうね。
対象症状のむくみ、関節の腫れや痛み、関節炎、湿疹・皮膚炎、夜尿症、目のかゆみ・痛みはこれで良いと思いますが、湿疹・皮膚炎は何でしょうか?蕁麻疹のようなたぐいでしょうね。

越婢加朮湯を飲む上での注意点は、まず普段から体が丈夫で疲れにくく暑がりであることです。それからもう一つ注意がありまして、この方剤は効き目は速いです。飲み始めてすぐ効果があるはずです。『使用上の注意』に1ヶ月以上服用しても良くならない時は医師、薬剤師に相談するとなっていますが、1ヶ月は長すぎです。もしこの薬が向かない、疲れやすい、あるいは冷えやすい人が1ヶ月も飲んでしまったら、体調はかなり悪くなり胃も痛むようになるかもしれません。3日飲んで何も変わらなければ向かないと思ってよいでしょう。
前述の丈夫で暑がりの人のむくみ・関節痛には非常によく効く薬です。タイプの合っている人は試してみてください。早い結果が出るはずです。

風邪で越婢加朮湯を使いたいという問い合わせを頂くことがありますので少し付け足します。越婢加朮湯は、越婢湯に朮を加えたものです(この朮については本来は蒼朮であるべきです)。越婢湯は風邪やインフルエンザに使われる麻黄湯の熱証版とも言えます。風邪のひき始めで、悪寒はなく熱感や喉の渇き、ほてりが強い時に用います。蒼朮が加わりますので、水分代謝異常の症状、つまり鼻水などの症状を伴います。ただ、現実的には使用機会は少ないかもしれません。

2014年3月30日日曜日

元気な人には効きません“十全大補湯”

今回は十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)です。
いつものようにOTC漢方薬の効能を見てみましょう。“体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血”とあります。
例によって体力云々から始まっていますが、体力を回復させる薬ですから、体力が有り余っている人が飲むことはないですし、十分に体力が有り元気な人が飲み続けたら、かえって高血圧や肥満、糖尿病といった病気に向かってしまします。あくまで足りないものを補うのがこの十全大補湯の役割です。
この場合の足りないものは、気力であり血であり、人間が生きている上で必要なもの全てです。じっくりと体を作ってくれるお薬と言えます。一般の人が持つ漢方薬のイメージに一番近いかもしれません。

ただし、本来この十全大補湯を必要とするのは、大病で寝たきりのような状態に陥った体を回復させるときです。かなり重い状態です。元気な方が飲んでもそれ以上は元気になりません。
よく話題になるガンに対する効果ですが、進行して体力低下が著しかったり、抗癌剤の副作用で食事ができず衰弱しているような状態には有効です。あくまで冷えを強く感じり、寒がりであることが前提となります。がん予防には全く効果はありませんのでお間違えのないように。。。

2014年3月23日日曜日

便秘薬じゃありません!桃核承気湯

今回は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。前回の桂枝茯苓丸と同じく駆瘀血剤(古い悪い血を取り除く)の代表方剤の一つです。
ただし、承気湯ですので、便通をつける効果がベースとなっています。桃核承気湯の場合は下腹部に薬効が集中しますので、婦人科系や下部消化器の疾患に主に用いることになります。桂枝茯苓丸は様々な部位での瘀血改善に利用できます。
さて、いつもの様にOTC漢方薬の効能を見てみましょう。“比較的体力があり、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:腰痛、月経不順、月経困難症、月経時や産後の精神不安、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)”とあります。だいたいこの通りで、当てはまる方は飲んでいただいて良いと思いますが、月経時や産後の精神不安と高血圧の随伴症状に関しては、あえて桃核承気湯を用いることはないでしょう。
比較的体力がありと言う表現は毎回のように書いていますが、適切とはいえません。体力があるのは健康と同義語だと思いますからね。“平素丈夫で疲れにくく、のぼせて便秘がち・・・”と言ったほうが適当かと思います。


桃核承気湯を飲むと良い月経不順は、基本的には生理周期が短く生理の量、期間も少ない場合です。ついでに言うと生理血も鮮紅色できれいです。黒ずんでいたり塊が混ざったり、生理も遅れがちでダラダラ続くようなタイプは全く別の漢方薬を使います。

一部で単なる便秘薬として桃核承気湯を奨めているところがあります。あくまで便秘を伴う人の下腹部の瘀血症状を改善する漢方薬です。瘀血が便秘の原因になることもありません。

2014年3月18日火曜日

血が汚れているなら桂枝茯苓丸

今回は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。
この処方は大変便利で色々利用価値がありますが、少し勘違いされて使われていることもあります。いつものようにOTC漢方薬の効能効果から見てみましょう。
“比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび”とあります。
まず例によって体力云々ですが、体力は関係ありませんし、体力があるのは結構なことです。薬を選ぶ上での尺度として何らの役にも、判断材料にもなりません。
桂枝茯苓丸は名前の通り、桂枝と茯苓という生薬が主剤(その漢方薬の性質を決める)となっています。桂枝の温性、茯苓の補性が桂枝茯苓丸の漢方薬としての作用方向を決定しています。※温性・補正に関しては八綱弁証を参考にして下さい
つまり桂枝茯苓丸は体を温め体力を補う働きを持ちます。ですから桂枝茯苓丸が適する人は冷え性で疲れ気味の人ということになります。ただ、この処方の特徴、面白いところは漢方薬としての偏りを治すという性質(温めたり。冷やしたりとか)があまり強くないということです。ある意味どんなタイプの人にも使えるのが桂枝茯苓丸の特徴です。


漢方でいうところの証(しょう)に拘る必要が余りありません。唯一キーワードとなるのが『瘀血』です。‘おけつ’と読みます。一言で言ってしまえば古い悪い血のことです。この古い悪い血の滞りが体の随所で悪さをするわけです。
効能にある‘月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび’これらの症状は基本的に瘀血症状です。ただし、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ以外は瘀血以外が主原因の場合も有ります。見極めとしては複数の瘀血症状が同時に見られるかどうかです。月経痛とニキビとか、肩こりと頭重・しみ等、瘀血が原因として起こりうる症状が複数あれば桂枝茯苓丸で改善できるはずです。リンク先の瘀血の症状も参考にして下さい。
誤って使っても問題の起きる処方ではないので桂枝茯苓丸は特に安心して使える漢方薬のひとつだと思います。また、婦人科専用の薬ではありませんので、男性の方でも打撲や歯茎の出血、痔など、いろいろ使うことが出来ます。

2014年3月3日月曜日

半夏瀉心湯

今回は半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)です。
この処方も正しくないというか、誤った使われ方がされていることが多いようです。
まずいつものようにOTC薬の効能効果を見ると“体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症”とあります。これもかなり訳の分からない効能効果になっています。これを一般の方が見てちゃんと使えるとは思えません。
まず、みぞおちのつかえ感は半夏泻心湯を使う上で欠かせない条件です。この処方の主剤をなしている黄連と黄芩の組み合わすは‘みぞおち’近辺、胸からへその上辺りにかけての不要な熱を冷ましてくれます。急性胃腸炎の場合は悪心・嘔吐を伴っているはずです。嘔吐する場合は食後すぐです。食欲がないとは限りません。お腹が鳴る必要はありません。軟便・下痢はこの半夏瀉心湯の主たる治療対象です。
胃下垂、神経性胃炎は関係ないです。胃弱なら他の方法を考えましょう。どんな飲み方をすれば半夏瀉心湯が効く二日酔いになるのでしょうか、かき氷をつまみに熱燗かな...
口内炎に劇的に効くことがあります。ただ口内炎だからといって飲んでも殆どの場合は効かないでしょう。みぞおちのつかえと軟便下痢が最低条件です。
神経症?どれだけ神経症の範囲は広いのでしょう...


普通はいくらかましな医療用(医師が処方する)の効能効果も半夏瀉心湯ではほとんど同じです。漢方薬の場合は他の薬と違い臨床試験を行って適応症を決めているのでは無く、一部の意見、書物を参考にしているので、的確な効能効果を表示している薬ばかりとは限らない状況です。一時代前のように漢方薬が、特別な知識を持ったカウンセリング主体の専門薬局での販売が中心だった頃は問題はなかったのですが、ネットでの購入が主体になっていくと、パッケージに書かれた一言一句が大きな影響力を持つことになります。



さて、話を半夏瀉心湯に戻しますが、この処方の使い方を簡単に表すと、
“みぞおち辺りに使え感があり、食欲があり喉が渇きやすく、悪心嘔吐を伴う軟便・下痢に効果があります。ただし慢性の軟便・下痢の場合は疲れやすく元気のない方に限ります”
こんな感じでしょうか、
あと、付け足すとすると、半夏瀉心湯は熱証用の方剤です。もともと暑がりで食欲はあり、どちらかと言うと便秘しやすい体質の人向けです。このタイプの人が極端にお腹を冷やすような飲食をしたために急激に胃腸のバランスが崩れ下痢してしまった状態を治療するために作られた処方です。
普段から食欲がなく寒がりな人は全く向きませんので注意して下さい。

2014年2月24日月曜日

元気がないなら補中益気湯

今回は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒”とあります。
胃腸が弱くて、元気がなく疲れやすい人のためのお薬です。ただ重要な項目が抜けています。補中益気湯は体を温めてくれるお薬です。冷えやすい、寒がりな人であることが必須条件になります。冷え易いとは反対の、のぼせやすく暑がりな人でも胃腸が弱く使えやすい人はたくさんいます。このタイプの人が補中益気湯を飲むとかえって不調になります。
冷える、冷えているということも補中益気湯を選ぶ上での重要なポイントになります。
「寒がりで胃腸が弱く、元気がなく疲れやすい人の次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒」ということで良いと思います。


この諸症状の中で一つ注意が必要というか、間違いと言っても良いかもしれません。感冒が入っています。風邪ですね。これでは風邪が治る、風邪に効くという意味になってしまっています。補中益気湯は風邪そのものには効きません。かえって長引かせる事さえ起こりえます。補中益気湯で効果があるのは風邪そのものではなく、風邪をひきにくくなるということです。風邪に対する抵抗力を高めてくれます。この辺りを勘違いして風邪の時に飲んでしまう人も多いし、風邪で処方してしまう医師もいます。注意が必要です。
あと注意点は、血圧が高い人でしょうか、補中益気湯には上へ持ち上げる、下がっているものを上げる効果があります。落ちている気持ちを上げる、落ちている体力を上げる、抵抗力を上げると言った感じです。ついでに血圧も上がります。血圧の高い人、暑がりな人、あと、元気な人は飲まないで下さい。これ以外の人には基本的には良い漢方薬だと思います。栄養剤代わりに、健康維持目的でも使える漢方薬だと思います。

2014年2月18日火曜日

激しい咳に五虎湯!?

まだまだ風邪の季節も続きます。咳・風邪に関わる漢方薬をまたご紹介します。
今回は五虎湯(ごことう)です。
五虎湯は麻杏甘石湯という発熱・咳などに用いる漢方薬に桑白皮という咳を抑える効果のある生薬を追加したものです。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力中等度以上で、せきが強くでるものの次の諸症:せき、気管支ぜんそく、気管支炎、小児ぜんそく、感冒、痔の痛み”とあります。どうしてこういう事になったのか見当もつきませんが、“痔の痛み”って...もはや出鱈目の域ですね。冒頭に書いたように五虎湯は麻杏甘石湯に鎮咳効果のある桑白皮を加えただけです。麻杏甘石湯の効能は“気管支ぜんそく、小児ぜんそく”とだけなっています。これはこれで不十分ですが、一体何処から五虎湯が痔の痛みに効くなんて出てきたのでしょう。
漢方薬の効能効果の文言が決められた際の経緯を詳しく知るわけではありませんが、おそらく一部の無知な専門家と称する者の意見を取り入れたのでしょう。ここではこれ以上掘り下げませんが、こうした見当違いの効能が書かれて一般の人が手にする形で販売されていることに憤りを感じていることが、このblogを始めた一因でもあります。

さて、効能を初めから見てみましょう。何度も書いていますが体力は関係ありません。この場合、体力がある・なしと言うのは物差しとして間違っています。体について表すなら、丈夫であるか虚弱であるかというのが正しい尺度になります。しかしこれも曖昧な表現です。要は漢方で言う実と虚に関することです。
病気に対する抵抗性が強い人、抵抗性が強い時に病気になると、病気に対してより強い抵抗性、反発を見せるので、より激しい症状が現れます。実証の病態です。逆に病気に対する抵抗力がない人、抵抗性が弱い時に病気になると、病気に対する反応が弱く、激しい症状は病状の重さの割に出ません。虚証の病態です。
五虎湯は、この病気に対する抵抗性の強い状態で強い反応を示している時に用いるお薬です。病気に対する抵抗性が強い時は、一気に病気を追い出すために効果の激しい薬を使います。これを間違えて、抵抗性の弱い人に使ってしまえば、余計に弱ってしまいます。
ですから、五虎湯は激しい咳のとき、激しい咳をしている人に使います。コンコンと弱々しい咳をして眠れないとか言っている状態ではありません。ゲホンゲホンと煩くて周りが迷惑する咳です。
もう一つ大切なのは、暑がっていることです。五虎湯は清熱性のお薬です。冷え性や寒がりの人がこのタイプの風邪・咳になることは滅多にありません。
少なくとも喉が渇き、体が火照って熱いことが必須条件です。
喘息では発作止めとして使います。たとえ抵抗性の強い人でも長期間は飲めません。1週間を超えて続けることは基本的にありません。長く続けると食欲がなくなったり動悸がしたりしてくる可能性もあります。
まとめると、五虎湯は喉が渇き暑がっている人の、とても酷い風邪の咳や喘息の発作止めとして効果があります。

2014年2月11日火曜日

長く症状が続くアレルギー性鼻炎に辛夷清肺湯

花粉症の季節になりました。
今年のスギ花粉は少ないようですが、春一番が吹く頃には辛くなっている人も多いかもしれません。
今回は以前にも少し触れた辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)です。
OTC薬の効能効果を見ると“体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)”とあります。
毎度のことですが体力は関係ありません。しかも中等度って。。。
熱感という摑みどころのない表現をしていますが、重要なポイントです。体質的に熱生産が盛ん、つまり冷え性の逆の体質と思っていただければ良いです。はっきりしている人だと、のぼせやすかったり、喉が渇きやすかったり、薄着で冬でも冷たいものを飲みたがったりします。熱証とよんでいる体質です。
ただ、鼻炎の症状に関して言えば、慢性的に鼻づまり、少なくとも2週間以上鼻づまりが続いていれば殆どが熱証の鼻炎症状です。
典型的なスギなどの花粉症は、鼻症状に関して言えば初期はクシャミ鼻水と言った水っぽい症状が中心で、季節が進むにつれ鼻が詰まってきます。アレルギーが長引いているために鼻粘膜が浮腫んでいるためです。こうした典型例の場合は寒湿証の鼻炎で先日ご紹介した鼻療などが良いです。


一方、通年性の鼻炎や副鼻腔炎もそうなんですが、花粉症の時期にクシャミ鼻水から始まっても、すぐに鼻が詰まってしまう場合は熱証の鼻炎ですので辛夷清肺湯が適しています。この鼻づまりは炎症性の鼻づまりですので、冷やしてあげることで治まります。粘りの強い鼻汁が出るなら間違いなくこのタイプです。
辛夷清肺湯の働きは鼻の炎症を鎮め粘りの強い鼻汁をゆるめて出しやすくしてくれます。また清熱性の生薬がかゆみを抑え麦門冬などの潤性生薬も含まれるので目のかゆみにも効果が期待できます。

逆に辛夷清肺湯を飲んではいけない人ですが、寒証の人、いわゆる冷えを感じやすい人ですね。寒がりだったり、手足が冷たいと感じていたり、冷房が嫌だったり、食欲がない人です。このタイプの人は鼻療を飲んで下さい。

2014年2月4日火曜日

風邪でも胃腸炎でも香蘇散

今回は香蘇散(こうそさん)です。
香蘇散は用途が広く安心して使える処方なので常備しておきたいお薬です。
まずはいつものようにOTC薬の効能を見てみましょう。“体力虚弱で、神経過敏で気分がすぐれず胃腸の弱いものの次の諸症:かぜの初期、血の道症”とあります。
毎度のことですが体力云々の表現は的確ではありません。疲れやすい、衰弱しているといった表現で虚証を表すべきです。ただ、香蘇散の場合は実証に用いても効果がありますので、この点は気にする必要もないです。大事なのは、体や内蔵を温めてくれる処方ですので、寒がりの人、冷えている人、あるいは冷えや寒さによっておきた病気に用いるお薬だということです。
香蘇散を一言で言うと、急性胃腸炎のお薬です。生の魚介類を食べ過ぎて胃腸が冷えたり、軽い食中毒になったような場合に用いるお薬です。お刺身のツマとして大葉(紫蘇の葉)が添えられていますが、香蘇散の蘇はシソの蘇です。シソの葉には解毒作用があることが知られています。
胃腸炎の症状の中では吐き気・嘔吐・食欲不振などに効果があります。下痢に対しては強い効き目はありませんが、ここのところ毎年冬に流行るノロウイルスなどに適した処方です。

本来、香蘇散は胃腸炎のお薬ですが、普通の風邪のひき始めにもよく効きます。悪寒から始まる風邪には葛根湯と変わらない位の発汗解熱作用を発揮します。
続けて飲んでも胃を痛めることもないですし、食欲も増しますので、葛根湯が飲めないような人にも使えます。また妊娠中でも服用できます。
効能の最後に血の道症とありますが、これはいわゆる更年期障害のことです。
ですが、これはちょっとどうでしょうね... 
メンタル的な部分では効果は有ります。

香蘇散は‘気’のお薬でもあります。香蘇散に含まれる香附子、陳皮は気の巡りを正してくれます。気の巡りが滞った状態を気滞、気鬱などといいます。
香蘇散はこの鬱な状態、気分の落ち込みを治す効果も持ち合わせています。
うつ病を治すというまではいきませんが、日常的な気分の落ち込みをスッキリさせるぐらいの効果は十分あるかと思います。
まとめてみますと香蘇散は、冷えや寒さ生ものの飲食による風邪(悪寒・発熱・頭痛・咳)、胃腸炎(吐き気・嘔吐)や、平素から寒がりな人の気分の落ち込み・食欲不振などの胃腸虚弱に効果があります
色いろ使い道のある良いお薬だと思います。
ただし普段から暑がりで冷たいものが大好きな人には使えません。
最後にもう一点、
香蘇散はもともとそれほど力のある方剤ではありません。OTC薬の香蘇散はエキス剤が大半ですが、本来の散剤(薬草の粉末で作ったもの)も販売されていますので、できればエキス剤ではなく本来の効果がある散剤をお使い下さい。(流通量は少ないですが杉原達二商店の香蘇散がお勧めです)

2014年1月26日日曜日

桔梗湯の内服液があるんですね

クラシエ薬品のHPを見ていたら桔梗湯(ききょうとう)の内服液というのが目につきました。
桔梗と甘草だけのシンプルな処方ですが、
喉の痛み・扁桃炎には効果があります。
効能効果も“体力に関わらず使用でき、のどがはれて痛み、ときにせきがでるものの次の諸症:扁桃炎、扁桃周囲炎”ということで、その通りですね。
いわゆる漢方の‘証’に囚われることなく用いることが出来ます。


せっかくドリンクタイプですので、ぬるま湯で割って、うがいしながら飲むとより効果的でしょう。家に常備しておいても良い薬です。

2014年1月19日日曜日

また花粉症が始まる...鼻療

もうすぐ今年もスギ花粉症の季節が始まります。
2月から5月ごろまで症状が続く人が多いかと思います。約3ヶ月、1年の1/4にあたります。秋も症状がある人や通年型の人はそれどころではありませんね。
さて、花粉症、アレルギー性鼻炎の漢方薬というと、眠気がないことで車の運転をなさる人や受験生などを中心に広く飲まれています。ただ、常に正しく使われているわけではないようです。
花粉症の漢方薬というと、小青竜湯、葛根湯加川芎辛夷、荊芥連翹湯がよく使われています。しかし、どれも本当は花粉症の薬ではありません。小青竜湯はもともと喘息の発作止めです。葛根湯加川芎辛夷は風邪の初期で、悪寒、後背部・身体の痛みに使う葛根湯に通鼻効果のある川芎と辛夷を加えただけのお粗末な処方です。
おまけにどちらも麻黄という生薬が主剤です。麻黄は気管支拡張や発汗作用を持つので風邪のひき始めに使う処方によく含まれます。有効成分は覚せい剤原料にもなるエフェドリンです。麻黄を含む処方は長期間飲むものではなく、症状のきつい初期症状の時だけ用いるもので3ヶ月も続けて飲むわけにはいきません。
血圧上昇や胃腸障害など様々な副作用を起こす可能性があります。
また麻黄はドーピング禁止薬物ですのでスポーツ選手は注意が必要です。
それから、小青竜湯も葛根湯加川芎辛夷も花粉症を治す効果はありあせん。症状の緩和だけです。最近はアレグラなどの抗アレルギー剤が一般販売されていますので、そのほうがまだましかと思います。
荊芥連翹湯は逆に長期間続けていくことで症状が改善されていく薬です。完治を目指している薬と言えます。ただ、対象は花粉症ではなく、蓄膿症や慢性鼻炎です。体質的に虚弱でのぼせやすく、喉の渇きや、手足のほてりなどを感じやすい人の扁桃腺炎・慢性鼻炎・蓄膿症を改善してくれます。

おすすめ漢方薬
花粉症の漢方薬で広く薦められる処方としては、
建林松鶴堂の鼻療(びりょう)辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)があります。
くしゃみや水様の鼻水から始まる花粉症であれば鼻療。
喉が渇きやすく、鼻づまりで粘りのある鼻が出る場合は辛夷清肺湯を使います。
どちらも季節の間を通して飲み続けて大丈夫です。


花粉症は完治できるのか
漢方薬で花粉症を完治させることは不可能ではありません。
ですが、簡単にお話できることではないので、
詳しい漢方専門薬局で相談なさるか、
私のサイトでご相談ください。
 秀峰堂中医学研究所
ただ、花粉症の場合は軽い年もありますし、無症状の季節のほうが長いので、その間の薬の服用と効果の判定が難しいことがネックにはなりますので、
季節の症状緩和だけを考えたほうが良い場合も多いです。

2014年1月13日月曜日

胃腸を丈夫にしてくれる‘六君子湯’

今回は六君子湯(りっくんしとう)です。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血症で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐”とあります。
例によって体力云々という表現は適切とは言えません。元気がない、疲れやすいと言った表現のほうが良いでしょう。貧血は全く関係ありません。冷えるのは手足だけではなく気虚、陽虚ですから全て冷えています。手足で言うならば、力が入らない脱力感と言ったほうが適当です。

六君子湯は胃腸の薬です。胃腸の弱さが原因で体が弱っている人の胃腸を丈夫にする漢方薬です。実際に効果のある症状としては効能の胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐のとおりです。これに慢性的な下痢症状も加わります。


六君子湯と似た漢方薬に四君子湯というのも有りますが、どちらも人参湯という漢方処方がベースになっています。胃腸疾患の中でも、栄養状態に問題が生じているような、ある程度深刻な場合に適しています。たまたまの胃痛や食べ過ぎの消化不良ということではなく、慢性的に胃腸が弱いために体重減少、あるいは太れないと言った状態に陥っているのが前提です。
長い間、胃腸に不調を感じている人の胃痛、胃炎、食欲不振、常習的な下痢、吐き気と言った症状を改善します。また一時的な症状緩和ではなく、胃腸虚弱自体を改善していく効果があります。吐き気がない場合は四君子湯で良いです。
六君子湯は胃腸が弱くて体重が増えない、食が細くて十分に食べられない人にお奨めできる漢方薬です。

2014年1月4日土曜日

長引く風邪の咳にも“神秘湯”

今回は神秘湯(しんぴとう)です。漢方薬としては意味ありげな変わった名前です。
喘息の薬として知られていますが、いつもの様にOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力中等度で、せき、喘鳴、息苦しさがり、たんがすくないものの次の諸症:小児ぜんそく、気管支ぜんそく、気管支炎”とあります。

毎度のことですが体力云々の表現は適切ではないですね。体力はあったほうが良いに決まっていますし、この神秘湯の場合だと、使用上の注意の相談することの中に虚弱な人が入っていますので、効能効果は症状や病名の表記だけで良いのではと思います。逆に使用上の注意を外包に書くべきでしょう。箱のなかに入っている添付文書は店頭での購入時は読めませんので・・・
効能に書かれている症状、病名としてはその通りですが、喘息が主体に思われてしまうの少し残念です。実際は風邪の咳にもよく効く薬です。
この神秘湯の特徴は柴胡、陳皮、厚朴といった‘気’を巡らす成分が多く入っていることです。自律神経の乱れ、精神的なストレスが原因になっていたり、精神的に長引かせてしまっている症状を軽減してくれます。

喘息はもちろんですが、気管支炎や風邪の場合でも、痰もほとんどなく、熱もないのに咳が2週間も3週間も続くといったことがあります。
そうした時に神秘湯のような理気剤、疏肝剤を含んだ漢方薬を使うことで、すっと良くなることがよくあります。風邪をひいて咳が抜けない時などには試してみてください。
それから喘息に対しての神秘湯の使用は、あくまで発作時、あるいは発作が起きそうな時にだけ使用します。麻黄が主剤ですので長期使用はしません。通常は数日間の服用です。喘息そのものを治してくれるわけではないので注意して下さい(喘息の治療に関してはこちらでも解説しています:秀峰堂中医学研究所別館)。

OTC薬(一般用医薬品)で発売されている神秘湯はあまりありません。建林松鶴堂の露恵が一番入手しやすいかと思います。軽い喘息発作が続いたり、風邪からの咳が長引いていたら試してみてください。