2013年11月25日月曜日

参蘇飲=虚弱な人の風邪に

今回は参蘇飲(じんそいん)です。風邪の漢方薬については以前にもまとめていますが、季節でもありますので、また少し書き足しておきます。
いつものようにOTC薬の効能効果を見てみると“体力虚弱で、胃腸が弱いものの次の諸症:感冒、せき”とあります。
簡潔に書かれているので問題はないようです。ただ少し足りないところがあるので足しておきます。
以前にも暑い風邪・寒い風邪のことは書きましたが参蘇飲は寒い風邪に使います。ただし寒い風邪と言っても葛根湯のように寒冷にあたって急激にひいたわけではなく、もともと寒がりの人が参蘇飲を服用するタイプの前提となります。


“寒がりで胃腸が弱く疲れやすい人のかぜ・咳”としたほうが良いでしょう。
またこの参蘇飲という漢方薬は大変弱い薬です。ですからもともと病気に対する抵抗力・免疫力の強い人には向きません。向かないというより飲んでも何も変わらないと思います。参蘇飲は普段から胃腸や気管が弱く、食欲がなく疲れやすく、いつも痰が絡んでいるようなかた、おおまかに言ってしまえば元気のないお年寄りが一番向いている薬です。
あとは一週間も経つのに風邪が抜けず、軽い寒気と軽い咳が続くようなときに効果があります。若い方の場合だと、治ったと思った風邪が、何となくまたぶり返しているような感じの時に効果があるかと思います。

2013年11月17日日曜日

冷え性に当帰芍薬散?

今回は女性のための薬ということで広く知られている当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。実際には男性に使う場面もそこそこあるかなと思います。
さて、タイトルに書いた‘冷え性’ですが、エキス剤(錠剤・顆粒)の当帰芍薬散は効きません。当帰芍薬散は冷え性の薬ではありません。
当帰芍薬散の構成生薬は当帰・川芎・芍薬・白朮・茯苓・沢寫です。この中で温性(体を温める性質)があるのは当帰と川芎ですが、エキス剤の場合は修治していない乾燥しただけの当帰を使っています。修治していない当帰はほとんど温性がありません。芍薬は修治して初めて温性になりますので、この芍薬は冷やす性質を持っています。沢寫は寒性の生薬です。
『当帰に関する考察』=秀峰堂中医学研究所別館
『生薬の修治』=秀峰堂中医学研究所別館



では、当帰芍薬散は何の薬かと、一言で言うなら貧血のお薬ということになります。
肝血の不足(肝血虚)の状態になってしまったために肝の機能が異常になり、その影響が隣の臓器の脾に及び、脾の働きの一つでもある水分代謝の異常が一層ひどくなり、むくみ・めまいと言った症状が起きます。
段々と話がややこしくなってきてしまったので、いつものようにOTC薬の効能効果で整理してみます。“体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り”とあります。かなり盛り沢山ですが、効かないわけではないけど効能に書くほどの効果はないだろうというのが大半かと思います。
まず“体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症”この部分は体質に関する前提ですが、ときに以下は治療対象の症状ですので消しちゃったほうが分かりやすいでしょうね。最初の体力虚弱で、冷え症で貧血・・・の貧血も治療対象症状ですから後半に書くべきでしょう。整理すると当帰芍薬散が向いている人の前提は、‘虚弱で冷え性(寒がり)で疲れやすく浮腫みやすい人’です。
治療対象となる症状は貧血がまず第一で、むくみ・めまい・生理痛・生理不順(遅れがちで周期がバラバラな場合)と言ったところに有効です。
他は別の処方を使ったほうが有効でしょうね。
まとめると、当帰芍薬散は“虚弱で冷え性(寒がり)で疲れやすく浮腫みやすい人の貧血・むくみ・めまい・生理痛・生理不順に有効です”
それから、他に体質的に合いそうな処方がなみあたらなければ、耳鳴り・尿量減少・軟便・立ちくらみと言った症状にも効果はあります。
あとは、よく利用されている流産予防に対しては人参を一緒に使ったほうが良いでしょう。不妊・不育に対しては、これだけ飲んでも何ともなりません。
不妊に関しては別の機会に詳しく書くつもりでいます。

2013年11月11日月曜日

水太りって...防已黄耆湯

今回は防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。
いつものようにOTC薬の効能・効果を見てみますと“体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)”とあります。
なかなか微妙というか、誤解を招く部分もありますね。まず体力云々ですが、防已黄耆湯は紛れも無く体力低下している人のための薬です。明らかに体力低下、虚弱傾向です。なぜなら防已黄耆湯は体力低下を治す薬ですから。体力低下、虚弱であるためにちょっとした事で汗が出やすい、必要な水を保持できなくて汗が出てしまう。まずこれを治す薬です。ですので多汗症というのは不適当ですね。汗をダラダラかくわけではないです。その場合は全く別の問題となります。

クラシエ防已黄耆湯

防已黄耆湯の効果は元気を出すことと、水分代謝・水はけを正しくすることです。全身的に浮腫みやすいですし、膝にも水がたまりやすいです。「肥満が先か膝の痛みが先か」ではなく、全く同じところに起因しています。
論じるなら「肥満が先か疲れやすいのが先か」でしょうね。これは疲れやすいのが先です。疲れやすい・気力がないためにあまり動かなくなり肥満に向かったのです。そこにもともとの水分代謝の悪い体質が重なっています。
防已黄耆湯の効果は、まず構成生薬の黄耆が元気をつけ、体を動かしやすくしてくれます。このタイプの人は特に運動する必要はありません。普通に動くようにしてください。そして、防已・白朮が水はけを良くして体内の不要な水を尿として正しく排泄してくれます。また防已には膝の痛みを直接緩和する働きもあります。
もともと水分代謝が悪い体質(尿が遠く、むくみやすい)の人で動くのが億劫な人は肥満とと膝痛になりやすいのでお気をつけて下さい!

2013年11月4日月曜日

お中の漢方薬:小建中湯

今回は小建中湯(しょうけんちゅうとう)です。
以前に桂枝加芍薬湯について投稿しましたが、小建中湯は桂枝加芍薬湯に膠飴(こうい)を加えた処方です。処方名からも分かるように「中」、おなかを建てなおすお薬です。
いつものようにOTC薬の効能効果をみてみると“体力虚弱で、疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸、手足のほてり、冷え、ねあせ、鼻血、頻尿および多尿などを伴うものの次の諸症:小児虚弱体質、疲労倦怠、慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜泣き”とあります。
だいたいこの通りの薬なのですが、‘動悸、手足のほてり、鼻血、神経質、夜泣き’の治療目的、あるいはこの処方を選ぶ目安にしないほうが良いでしょう。
このお薬は典型的な寒虚症用の方剤です。寒がりで体が冷えている人のお腹の症状に使います。


膠飴は水飴、還元麦芽糖のことです。もともと還元麦芽糖はお腹に弱い子供の栄養剤的な目的で用いられていました。小建中湯は桂枝加芍薬湯+膠飴ですから、お腹の弱い強弱な寒がりな子供を丈夫にするためのお薬ということです。
桂枝加芍薬湯と比べての小建中湯の特徴は膠飴の栄養面ということだけではなく、膠飴の湿性にあります。乾燥気味の体に潤いを与えてくれるのです。
お腹が乾いていると便の水分が失われ硬くなり便秘になります。ですから、桂枝加芍薬湯は主に下痢がちの人に、小建中湯は便秘がちの人に使います。
それから体の乾燥、燥性がすすむと寒証の人でも部分的に熱証的な現象をおこします。手足のほてりやイライラ怒りやすくなったりしてきます。ただこれは極端な場合であって、よほど栄養状態の悪い人でない限り起こりません。ですから効能にある熱証の症状(ほてり)や神経性の症状は考慮しないほうが良いでしょう。
まとめますと小建中湯は、お腹の弱い便秘しやすい痩せた子供を丈夫にしてくれます。そして、大人では特に過敏性大腸炎の場合に、下痢が多ければ桂枝加芍薬湯、便秘しやすければ小建中湯を使ってください。
それから、小建中湯は半分以上が水飴ですので甘くて飲みやすいです。また子供用に飴や水飴になったものも販売されています。